Foomii(フーミー)

世に倦む日日

田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)

田中宏和

戦慄の令和の粛軍事件 - 失脚させられた「元海将」の謎を解く

■12月26日、海自の情報業務群司令だった一佐の井上高志が、「特定秘密」漏洩の疑いで摘発され、懲戒処分の上で書類送検されるという事件が発生した。特定秘密保護法違反が初めて適用された衝撃のニュースである。漏洩先の相手は海自OBの「元海将」とだけ伝えられていて、海自とマスコミは名前を公表していない。ネットでは香田洋二ではないかという噂が広まっている。「元海将」の経歴情報や「講演のために必要だった」という説明から、香田洋二ではないかと憶測するのは自然なところだ。私も同じ見方である。「元海将」と井上一佐は元の上司部下の関係で、「元海将」の依頼に応じて、横須賀の艦隊司令部庁舎内で安保情勢のブリ―フィングをした際、「特定秘密」を漏洩した。 マスコミ報道は、「元海将」には「特定秘密」を聴き出そうという意図はなく、特定秘密保護法に抵触するという意識はなかったように報じているが、私は、それは嘘だと考える。井上一佐の方にはそれが「特定秘密」だという自覚があった。自覚はあったが、相手が「元海将」であり、元上司へのブリーフィングであり、海自艦隊司令部から依頼された任務(面談)であったため、問題にはなるまいと思って機密情報を伝えたのである。井上一佐本人にとっては、漏洩ではなく報告の意識だっただろう。マスコミは、井上一佐と「元海将」の関係が日本的な親分子分の間柄で、だから法令順守を逸脱する不覚をとったという俗っぽい「解説」をしている。だが、それは違うだろう。真実の正確な説明ではない。 ■「元海将」が香田洋二であった場合、その存在は、海自の現役隊員にとって事実上のオーナー格であり、海幕長や統幕長よりも「偉い」指導的立場の棟梁だ。読売新聞社の幹部にとっての渡辺恒雄とか、京セラ社幹部にとっての稲盛和男のような超越的存在で、たとえ組織の現役の上官でなくても、要求や依頼があれば、積極的に応じてサービスを提供するのは当然の義務なのである。憲法9条と自衛隊法の海自から日米同盟の攻撃型の海自へ、その転換と改造と拡張を果たし、中国との戦争で主力となる強大な艦隊と戦力を作ったのは、他ならぬこのオレだという自負が香田洋二にはある。海自の現役幹部たちはみな香田洋二に育てられた元部下で、香田洋二の指導と監督の下でネイバル・オフィサーに育った者たちだ。 そしてまた実際に、香田洋二の地位と実力というのは、海自にとって領導者の存在であり、装備や編成や作戦の構想計画も、人事も、香田洋二に負うところが大きい(大きかった)のである。海自の頭脳だったのだ。海自OBで大物は何人かいる。伊藤俊幸とか河野克俊がいる。階級的には河野克俊の方が上だ。だが、河野克俊は軍人というより政治家で、安倍晋三とアメリカに気に入られている評論家に過ぎない。現場に実務的に影響力がある香田洋二とは比較にならない。香田洋二は軍人であり、海軍の中身を知っている。人脈的心情的に、現役士官のコミットは、香田洋二に対しての方が河野克俊に対してよりもはるかに強いだろう。頭脳であり事実上のトップだったから、香田洋二には「特定秘密」化された情報が必要だったのだ。作戦の立案設計のために。
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