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世に倦む日日

田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)

田中宏和

防衛省世論工作の恐怖 -「情報戦・認知戦」で反戦の声を封殺、思想犯罪化

12月10日(土)、防衛省がAI技術を使い、SNSで世論工作する研究に着手したという報道が流れた。日本の防衛政策への支持を広げたり、有事で敵国へ敵対心を醸成したり、国民の間での反戦・厭戦の気運を払拭するのが狙いだとある。発信元は共同通信で、複数の政府関係者を取材して明らかになったと情報源を記している。中日新聞が論説を加えた最も詳しい記事を書いていて、内心の自由を侵すことを禁じた憲法19条違反であると指弾する志田陽子の解説を載せていた。朝起きたらツイッターのトレンド欄で事件が話題になっていて、クリックすると何人かの左翼系の定番論者が批判の反応を書き込んでいるのが目に入った。 一方、ヤフーに上がった記事のヤフコメ欄を確認すると、三牧聖子や高橋浩佑や岡部芳彦が登場して、この防衛省の世論工作政策を支持し正当化する意見を書き込んでいる。上位のコメントは賛成派の声ばかりで埋まっている。中露など権威主義国家が「認知戦」でそれをやっているのだから、日本も防衛上同じ対策措置を講じるのが当然だという主張だ。ヤフーニュースの編集者がこの立場なのだろう。反応はツイッターとヤフーで二つに割れた形になっている。おそらく、防衛省の人間が意図的に「告知」の意味で共同通信に流し、それを知った中日新聞が批判記事にして一面トップのスクープにしたのが経緯だろうと推察される。防衛省側としては、中日新聞方面の批判はガス抜きの地均しだ。 ■告知と地均し 防衛省によるこのリークそのものが、卑劣でな情報作戦であり、悍ましい政治工作に他ならない。暴力装置たる軍による市民社会への政治介入であり、圧力行使である。威嚇と操縦だ。共同通信とヤフーは情報戦の協力機関だ。日本国憲法の前提と環境の下ではあってはならない、許されない行為だ。一体、誰がこんなリーク(作戦)を実行したのだろうと思い、防衛研究所政策研究室長の高橋杉雄の顔が浮かんだ。今、テレビに出てやりたい放題やっている。オレが国の戦略を動かしているという有頂天気分が丸見えで、軍国支配者の振る舞いに抑制がなくなっている。そろそろ頃合いだから一発リーク(布告)しとくかという時機判断と作戦決行だったのだろうか。 使い切れない青天井の予算が来年度来るから、その処理の便宜、すなわち軽費のエクスキューズにもうってつけだという事情も考えられる。AIシステム開発などという費目と使途を設定すれば、幾ら使ってもお構いなしで会計検査院の監査をスリ抜けられる。実際、防衛省はすでにこの「『情報戦』行政」に着手していて、4月に「フェイクニュースによる世論誘導を防ぐ役割を担う『グローバル戦略情報官』を新設」している。このリークの後、「フェイクニュースによる情報戦に確実に対処できる体制の構築と対外発信の強化や、情報本部でAIを活用した公開情報の自動収集・分析機能を整備すること、などが検討されています」と、TBSが後追いで防衛省の公式見解を代弁している。
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