■日本の核武装をずっと言い続けてきたのは安倍晋三だ。誰でも知っている事実だ。だが、そのことが原爆の慰霊の季節に語られない。安倍晋三が糾弾されない。眼前のマスコミの風景に苛立ちを覚える。官房副長官だった20年前、早稲田大の講演会で「核使用は違憲ではない」と暴言を吐き、週刊誌に書かれて大問題になった事件があった。安倍晋三は根っからの核武装論者で、その後も機会ある毎に観測気球を打ち上げてきたし、櫻井よしこをプライムニュースに出演させて、核武装容認の世論を根づかせる策動を行ってきた。 今年、核共有を最初に言い上げて、マスコミの議論に持ち込んだのも安倍晋三である。ロシアのウクライナ侵攻から3日後の2月27日に、フジの日曜報道 THE PRIME に出演して打ち上げた。核を持ってないと攻められるという口上を垂れ流し、ロシア叩きのプロパガンダの奔流に便乗し、世論を巧みに誘導する流れを作った。安倍晋三の邪悪な工作は成果を得て、3月27日の日経新聞の世論調査では、「核共有の議論をすべきだ」が79%になるという深刻な状況が作り出された。マスコミが核武装を煽る事態となった。 ■ウクライナのようになりたくなければ核保有すべきだ、隣に核大国がいて侵略の脅威があるのだから核武装は当然だ、という主張を、報道1930などテレビ番組が右翼論者に吠えさせ、反論する反対論者の登場はなく、放送内での論争場面もなかった。安倍晋三は、核武装論と並行させて、同時に防衛費2倍増論も打ち上げ、こちらもマスコミの世論調査で支持多数となり、岸田文雄が参院選の公約にして現実化する進行となった。さらに、敵基地攻撃能力は反撃能力と名前を変えて遂に政府が公認するところとなり、年末に出される防衛3文書の政策の目玉として具体化される展開となった。 今から2年前、2020年10月に書いたブログ記事がある。報道1930で敵基地攻撃能力が特集され、アメリカが日本に実行させる戦略を小谷哲男が直截に語った回についての感想文だ。小谷哲男は隠さず簡潔に要点を述べた。この放送で面白かったのは、番組が「INF」を「中距離ミサイル」と終始訳して説明を続けた点であり、松原耕二も、堤伸輔も、小谷哲男も、とぼけたまま欺瞞の演技を続け切った。言うまでもなく、INFとは Intermediate-range Nuclear Forces の略号であり、日本語訳は中距離核戦力である。私以外には誰もその欺瞞を衝かなかった。… … …(記事全文3,872文字)
世に倦む日日
田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)