■ロシアの外交官8人の追放を発表したのは4月8日だった。前例のない暴挙であり、平和国家日本の外交史に汚点を残す過誤だと言える。政府がこの決定を下した理由は、「G7を含む国際社会と連携」とか「現下のウクライナ情勢を踏まえた総合的判断」と説明されている。4日に報道されて世界を震撼させたブチャ虐殺事件を受けての対応であり、翌5日にドイツやフランスなどEU諸国がロシア外交官の大量追放を発表した措置と足並みを揃えた行動である。 この8日の政府決定に、野党や元外交官などから全く異論が出ず、無風のまま是認され、今日まで国会でも議論がされてない。マスコミも異議なく肯定する論調で素通りさせ、何も検証されていない。重大な決定の根拠や基準が問われず、明らかにされていない。政府に説明責任が求められていない。だが、5日の産経の記事を見ると、「日本政府に今のところ(欧米諸国に)同調の動きはなく、慎重に対応する構えだ」と書いている。3日間で急に態度が変わって決定に至った。 ■アメリカの圧力による旋回が想像できる。前日7日には、自民党が会合を開き、佐藤正久が「ロシア外交官の追放を早期に行うべきだ」「ロシア外交官の追放も(欧米と)連携しながらやるべき」と主張、政府に一撃を入れていた。この発言があった翌日、あっさり岸田文雄は外交官追放を決定、発表している。佐藤正久がアメリカの意向をバックに党で政策を方向づけし、瞬時に政府決定へと反映されている。権力が官邸になく、佐藤正久の掌中にあることが分かる。 政府が最初は慎重姿勢で構えていたのに、何日か後で覆され、西側と歩調を合わせる決定に変わった政策事例が、今度のウクライナ戦争では幾つかある。ゼレンスキーの国会演説実施もそうだ。演説の打診が日本政府に来たのは3月15日である。16日のテレ朝の記事を見ると、「ただ、関係者によりますと、日本の国会にはオンライン演説の前例がないことに加え(略)技術的なハードルもあることから今後、日本政府は演説の実施方法を巡り国会で検討していく方針です」とある。… … …(記事全文3,534文字)