■先週(4/3-4/9)はブチャ虐殺でさわめき立った一週間だった。先々週(3/27-4/2)はアゾフ連隊のクレンジング(政治漂白)の一週間だった。戦争プロパガンダの毒気の濃度がますます高まって、人の大脳神経を侵し狂わせている。今週(4/10-4/16)は、マリウポリの陥落に合わせて「ロシア軍が化学兵器を使用した」という告発と喧噪の一週間になりそうで、その前奏曲として、ロシア軍新司令官に任命されたドボルニコフが「シリアの虐殺者」だったというプロパガンダが周到にシャワーされている。 先週より、日本のマスコミ報道は、ブチャ事件をロシアの仕業と断定し、その上で、ロシア軍による虐殺や非道な戦争犯罪の「諸事実」を報道で積み重ね、既成事実化し、それを前提にした認識と議論を押し固めている。検証はない。ロシア側からの反論はまともに取り上げられず、最初からウソだと決めつけられていて、ロシア発の情報は悉くプロパガンダの扱いで処理され、頭から排斥されている。ロシア側の言い分も一応は聞いて吟味検討してみようかという姿勢は微塵もない。 ■国際社会の反応を見ると、4月8日に行われたロシアの人権理事国資格停止をめぐる国連総会の票決では、賛成93か国、反対・棄権82か国と、ほぼ半々の拮抗した結果になっている。この決議案の政治は、ブチャ虐殺についてロシアを糾弾し村八分にする目的の外交ゲームで、英米が主導して素早くキャリーした作戦だった。その意味から鑑みれば、国際社会の半分は西側に与せず、冷静で慎重な立場で事件に臨んだことになる。戦争犯罪の刑事事件なのだから、まずは国連の調査団が入って確認と検証するのが手続き的に筋だった。 ロシアは安保理開催を求め、これはウクライナ側が仕掛けた罠だと抗議して、中立的な第三者の調査と報告という方向に持って行こうとしたが、英米が却下して、いきなり国連総会での採決に持ち込んだ。この拙速な進行と手法が、却ってブチャの事件像を怪しくさせているように思われてならない。ロシア軍の犯行だと断定する主張に自信があるのなら、なぜ国連調査団を現地に入れないのか。私自身は、時間が経過すると共に、虐殺はアゾフ連隊の仕業 - ロシア軍協力者の掃討 - ではないかという心証を強めている。… … …(記事全文4,117文字)