Foomii(フーミー)

世に倦む日日

田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)

田中宏和

ブチャ虐殺を解説する「専門家」への疑問 - その矛盾と杜撰と飛躍

昨日(4/7)、プライムニュースに出演した小泉悠が、ブチャの虐殺を実行したのはFSB(連邦保安局)の部隊だと断定した。ブチャの村民の証言をAFPなど西側メディアが拾って発信した情報が根拠になっているらしい。最初に正規軍が入り、正規軍の部隊が最前線に移動した後、治安任務を担当するFSBの部隊が村に入り、そこで拷問や虐殺が行われたのだと説明する。その目的は、占領した村の住民に恐怖を植え付けるためで、残忍な恐怖支配のために組織的計画的に虐殺を行ったのだと言う。 現時点では、この小泉悠の言説が、日本だけでなく西側全体の了解となっていて、ブチャ事件の真相として既成事実になりつつある。マスコミ報道の中で、この見方に疑問を呈する意見は、4/6以降は一つも出ない。おそらく、週末(4/10)のサンデーモーニングでもFSB真犯人説が「専門家」から披露され、定説として踏み固められるのだろう。しかし、軍事解説としては、小泉悠の話は論理的に飛躍があり、常識的に無理がありすぎる。4/5に報ステで兵藤慎治が示した見解とも矛盾する。 ■正規軍が前方に進出した後、後方の占領地に入ってきた治安部隊には、占領統治を全く行うという作戦任務がある。その中には、抵抗分子を摘み取るという課題もあるだろうが、先ず何より占領地の民心を慰撫して歓心を醸成し、安定を確保するという目的がある。GHQの「ギブミーチョコレート」の図を想起すればよい。苛烈な暴力を先に行って、住民に恐怖心を植え付け、見せしめ効果で支配を実現するという手法は、13世紀のモンゴル軍の歴史を彷彿させるが、近代国家の軍隊でそれをマニュアルとしている軍隊はないだろう。 常識で考えて荒唐無稽である。せいぜい、ナチスドイツ軍のバルバロッサ作戦の例があるが、これも失敗した例として軍事の教科書に収まっているわけで、暴力恐怖(テロル)の占領支配をFSBがウクライナで計画的に実践したと考えるのは、軍事の実務の問題として非合理的にすぎる。FSBの前身がKGBで、プーチン政権がKGBシロビキを主軸とする点から考えても、FSB治安部隊にこの任務を指令して実行させたと解釈するのは、あまりに論理的に不整合だ。マリウポリでzマークの支援物資を支給している図とも矛盾する。
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