Foomii(フーミー)

世に倦む日日

田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)

田中宏和

ブチャ事件の考察 - 金言から禁句になったマルクスの「すべてを疑え」

昨日(4/5)、報ステに出演した防衛研の兵藤慎治が、ブチャの事件について次のようにコメントしていた。(1)事件はロシア軍の撤退直前に行われたと確信していたが、そうではなく3週間前だという証拠映像が出てきて驚いている、(2)犯行は正規軍部隊の作戦行動だとは絶対に思えず、傭兵等特別な軍隊の仕業だと考える、(3)露顕したときの政治的影響の大きさを考えると、現場の軍の判断でできることではなく、モスクワ中央の関与か意向があったのかと疑う。 こういうコメントをするところが、兵藤慎治のいいところで、真面目な職業軍人らしい性格が滲み出た瞬間だ。兵藤慎治は現場の司令官の立場で分析して、撤退直前の軍隊の戦場心理の為せる業だろうかと直観していたのである。だが、証拠映像的にはそうではなく、侵入してすぐの犯行で、3週間も遺体を放置していたと言う。その報道に接し、合理的な分析と結論が出せなくなったのだ。つまり、何でこんな事件が起きたのか分からないと正直に語っている。 軍というものを基本的に信頼し、軍に仕える身の兵藤慎治だからこういう見解が出る。この兵藤慎治の苦しい弁解 - 合理的な分析と判断ができない - が、この事件について、真偽も含めて、われわれが検討する上での手掛かりになる予感がする。兵藤慎治の分析では、ブチャの事件は軍の行動として辻褄が合わないのである。説明できない、あり得ない事態なのだ。そのため、軍以外の論理が介在したのだろうと推定し、上の政治(プーチン)がこの行動をさせたのだろうという認識になった。 この兵藤慎治の推論は、逆の方向から動機を考えて論理が破綻することが分かる。政治的影響を誰より意識するのは政治家で、軍人よりも政治家の方が、当然、事件の政治的影響の大きさにセンシティブだからだ。兵藤慎治は、事件の犯人を軍人以外に求めようとして、政治家(プーチン)を指さしたのだが、この解釈は、普通に考えて納得するのは無理である。もし、モスクワが直接関与していたなら、必ず撤退前に証拠隠滅せよと指示するだろうし、万全なカムフラージュを厳命しただろう。こんな致命的な問題を放置したままなどあり得ない。
… … …(記事全文4,508文字)
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