■前回、内田樹と平野啓一郞を批判した。大勢順応と付和雷同と阿世保身としか言いようがなく、残念であり、日本の知的レベルの低さの証左だ。内田樹の23日のAERA寄稿でも、「『ウクライナ政府はネオナチに支配されている』というプロパガンダを信じるのは情報統制下にあるロシア国民だけだろう」と書いていて、ウクライナの政権がネオナチに支配されている事実を否定している。マスコミのCIA御用論者や松原耕二と同じ発言をしていて、それを「陰謀論」として排斥する立場に立っている。 ウクライナがネオナチの巣窟になっていること、極右民族主義が復古して跳梁跋扈していること、彼らがウクライナの政権と軍部を壟断していること、そのバックにCIAがいて資金と謀略工作で支援していること、これらのことは、侵攻前までは世界のリベラルの中で一般常識であり共通認識だった。決して「プロパガンダ」などという範疇で括られる事柄ではなく、ロシア国民だけが認識している事実でもなかった。内田樹は、本気でそれを虚妄な政治宣伝だと信じて切り捨てているのだろうか。 ■日本の言論はまともなものが何一つない。知性のレベルを証するものがない。商売の動機から阿世の言辞と思考停止で済ましているものばかりだ。今回の危機と侵攻が始まって以来、私の目に止まって膝を打ったのは、元外交官の浅井基文の議論だけだ。3月6日のコラムでは、侵攻に至った経緯と構図を客観的に整理し考察した上で次のように結論している。これぞ知識人の言葉だろうし、われわれに求められている正しい態度だろう。 ---------------------------------------------------- 私たちとしては、西側論調に振り回されることなく、ロシアがウクライナ軍事侵攻を余儀なくされた原因をしっかり見て取ることが求められる。(ロシアの安全保障環境を際限なく損なおうとする西側、特にアメリカの「東方拡大」戦略にあることを見極めなければならない。(略)ロシア糾弾に終始するのは本末転倒であり、私たちは何よりもまず、ウクライナをNATOに加盟させてロシアの息の根を止めようとするアメリカの戦略的貪欲さを徹底的に批判することが求められている。 ----------------------------------------------------… … …(記事全文3,689文字)