マリウポリの悲惨な状況を見ながら、なぜここで国連が動かないのかと思う。なぜ住民を救助するべく前に出ないのかと歯噛みする。そして、国連難民高等弁務官として活躍した緒方貞子の勇姿を思い出す。イラクのクルド人を助けるべく、それまでの国連の方針を転換、国境を超えて逃げられない国内避難民に対しても支援を行うという決断をした。何度も映像で紹介される It is not acceptable と言い切る場面。サムライの言葉。武家の女(むすめ)の魂魄。本当に素敵で、日本人として誇らしく思う。 世界が尊敬した「身長5フィートの小さな巨人」。どれだけ、どれだけ緖方貞子のおかげで助かった命があっただろう。どれだけ多くの弱者の命を紛争地で助けてきただろう。ルワンダの救助活動のときの映像だろうか、現地の難民の女性リーダーと抱き合う感動的な場面があり、脳裏に焼き付いて忘れられない。偉大な人だった。単に知性が高く有能なだけでなく、情(こころ)があり、倫理があり、志が高く使命感があり、人格がすぐれていた。戦後民主主義の平和主義の人だった。 国連高等難民弁務官。UNHCR。この組織の理念と表象は、まさに緒方貞子の姿と共にあり、緒方貞子のおかげで人々から信頼を得て現在がある。そう言っても過言ではない。そう思う。然るに今、ウクライナで何百万人もの人々が命の危険にさらされている中、国連高等難民弁務官はどこで何をしているのか。緒方貞子だったら、メッセージを発信し、ブルーヘルメットと防弾チョッキを身に着け、部下を従えて敢然とマリウポリに直行しただろう。皆さんの中で、今の国連高等難民弁務官が誰かご存じの方はいるだろうか。 私は知らない。検索して調べると、フィリッポ・グランディというイタリア人の男で、この仕事を30年間やってきた専門家だという。緒方貞子の下でも働いていたらしい。ということは、グテレスの相棒だろうか。国連難民系官僚。グテレスもこの男も、緒方貞子をてめえの出世の出汁にしている。不愉快で唾を吐きたくなる。丸山真男の名前だけ利用し出汁にして、出世してふんぞり返っている日本の政治学者みたいだ。何もしてないじゃないか。偉いポストに就いて、やってるフリしてるだけじゃないか。… … …(記事全文3,296文字)