━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「植草一秀の『知られざる真実』」 2011/12/23 2011年の年間回顧(1)シロアリ退治がシロアリ守護神へ 第84号 ──────────────────────────────────── 2011年も残すところわずかとなった。2012年を展望するにあたり、 まずは、2011年を回顧することが必要である。 3.11の大震災と原発放射能事故の衝撃があまりに大きく、他のすべてが かすんでしまうのが2011年の特徴である。 しかし、こうしたなかで現実を注意深く観察すると、震災・原発事故を大き な背景としながら、そこに二つの大きな流れが生み出されていたことが分かる。 消費税という縦糸と、小沢氏攻撃という横糸である。この縦糸と横糸はひと つの布を編み込むように、相互に絡み合う糸である。 さらに、全体を覆い尽くしてきたのが欧州政府債務危機という暗雲であった。 3.11の大震災は、死者・行方不明者約2万人という未曽有の犠牲者を生 み出した。戦後の自然災害で最大の犠牲者を生んだ巨大災害となった。 被害を生み出した最大の原因は津波だった。1896年に発生した明治三陸 地震津波では岩手県綾里で38.2メートルの津波遡及高が観測されている。 今回の津波では、一部地域で津波遡及高が40メートルを超えたことが報告さ れており、明治三陸地震津波とほぼ同規模の津波が日本列島を襲った。 原発事故が発生してから一般にも広く伝えられるようになったが、東北地方 太平洋岸には、古くから定期的に巨大津波が襲来している。古くは869年の 貞観地震津波が記録に残されているが、この巨大津波により東北地方の当時の 海岸線から3~4キロメートルも内陸部まで浸水していたことが明らかにされ ていた。 さらに、同規模の津波が450~800年の再来間隔で過去に繰り返されて いたことも明らかにされており、その研究の成果として、同規模の津波が近い 将来に発生する可能性が強く警告されていたことも、3.11津波のあとに広 く一般に知らされるようになった。 津波に備えて、太平洋岸の各地域では、巨大な防潮堤などが建設されてきた が、今回発生した巨大津波には無力であった。過去に発生した津波に対する検 証と、その検証に見合う備えが十分に実行されては来なかったのだ。… … …(記事全文5,495文字)
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植草一秀(政治経済学者)