■渡邉哲也の今世界で何が起きているのか (通常版)
■渡邉哲也政経塾 (スタジオ観覧、歓談付き)募集開始
■イラン戦争 仮総括レポート
イランと米国が最終的な終戦に向けての協議を開始します。改めて、この戦争の整理をしたいと思います。
■なぜ米国がイランを攻撃したか
①イスラエル等の暴走の可能性(核兵器の利用を示唆) ②欧州を含む周辺国への脅威の拡大(中距離ミサイルと核兵器) ③石油利権をめぐる問題。イランの石油確認埋蔵量(9%)がBRICS通貨等の裏付けに(ドル支配構造の維持) ④イランの人権問題(トランプの民主化支援発言)
そのうえで、④の民主化(政権瓦解)は戦争の大義であって目標ではありません。今回の戦争を通じて、イランの政権幹部および革命防衛隊の幹部は排除されました。しかし、ここからは外国人ではなく、イラン人自身が未来を決める必要があります。
■米国が得た成果:核問題の終止符
米国は②の脅威に関して、47年間に及ぶイラン革命勢力との話し合い、そして騙され続けた「核放棄」に一定の終止符を打つことができました。 イランは核開発の放棄を約束し、国内にある濃縮核(核爆弾11発分)の国内希釈に合意しました。これにはIAEAなど国際機関と米国などが共同で取り組む形となり、この過程でイラン国内に限定された軍の展開が行われるものと思われ、一種の進駐軍的な部隊が限定的ではあるが展開されることになります。
■石油利権の再編とイラン経済の再建
イランの油井は停止により傷ついているものと思われ、破壊や老朽化した施設の再建には米国の協力が不可欠です。このため、結果的に米国の石油メジャーなどが再建と管理に協力することになります。
また、これまで制裁により国際価格の半額程度で中国に売ってきた石油は、制裁解除とメジャーの参入により国際価格に引き上げられます。 イランの石油輸入収益は約450億〜670億ドルといわれており、これが倍程度まで引き上がることで、年間7兆円から10兆円の余剰利益が出ます。さらに、生産量もメジャーなどの持つ新技術の導入により増やすことが可能になる可能性があります。
これは国家再建のための原資として十分な価値を持ち、資金の出し手にとっても安定した担保として機能します。
■中国が失うもの:最大の敗者
イランが国際社会に復帰する(米国メジャーなどが関与)ことで、ベネズエラ同様、中国の石油支配権が失われます。
ベネズエラ:総輸入量の10%
イラン:総輸入量の10%
ロシア:総輸入量の20%(停戦すればこれも失う可能性)
今回の戦争で、中国がイランを通じて湾岸諸国を攻撃した構図となり、中国製兵器や防衛システムが役に立たないことも明確化しました。湾岸諸国は中国を単なる大口顧客として扱うことになるでしょう。
■BRICS通貨構想の崩壊
BRICS通貨は、
ベネズエラ(19%)
イラン(9%)
中東湾岸諸国
これらの石油埋蔵量を背景に「世界の75%の原油支配」を前提として成立していた議論でした。 しかし、イランとベネズエラの支配権を失ったことで、BRICS通貨構想は実質的に崩壊したとみるべきでしょう。
中国は安価な石油と石油シェアを失い、反米国家に拡販してきた中国製武器が役に立たないことが証明されました。これにより、中国の原油コストは少なくとも20%、最大40%程度上がると推定され、中国の産業競争力が大きく損なわれると思われます。また、人民元決済システムで決済されてきた闇原油の減少は、人民元国際決済の減少にもつながります。
■英国の失墜:次の敗者
英国は今回の戦争で全く役に立たず、再保険を中心とした保険システムとP&I保険組合、船員組合などの海の秩序を守れませんでした。逆に再保険システムが弊害となり、ホルムズ海峡封鎖の影響を拡大したとも言えます。
米国は保険を含む新たなシステムを国際社会に提案しました。これは340年にわたり続いた英国の海の支配の終焉であり、シティ・オブ・ロンドンの終焉の始まりとなるでしょう。NATOの中心国家としての英国もすでに過去のものになりつつあります。
■戦争後の世界秩序:不可逆的な変化
戦争は紛争の最終解決手段であり、次の秩序を生み出す最大要因です。 戦争が終わっても、一旦変更されたサプライチェーンは簡単には回復しません。
ホルムズ海峡の迂回ルート構築
パイプライン・運河計画の加速
「コストより安全保障」への価値観転換
安定供給を前提とした調達体制への移行
イランのホルムズ海峡を人質に取った作戦は、これを回避するための最大の原動力となり、世界は安全保障を優先した調達へと変化していくでしょう。
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著者:渡邉哲也(作家・経済評論家)
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