□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2015年10月2日第809号 ■ ============================================================= 日中間最大の政治問題になるおそれのある2邦人スパイ容疑逮捕 ============================================================= いまから考えれば9月30日の朝日の「中国で日本人2人拘束」というスクープ記事は大きな意味を持っていたということだ。 このスクープ報道がきっかけで中国外務省が9月30日、スパイ活動に関わった容疑で日本人男性2人を逮捕したと発表した(10月1日日経)。 日本政府もやはり9月30日の記者会見でこれを認めた(同上) 10月1日の読売新聞に至っては、「日本政府は事態が長期化すれば日中関係にとって冷や水になりかねないと懸念している」などと書いている。 日本政府の代弁役である読売新聞らしい記事だ。 しかし事態は懸念どころではない。より深刻なのだ。 なにしろこの二人は今年の5月から長期にわたり拘束されてきたという。 それを日中双方の政府が隠していたのだ。 それほど政治的に微妙な問題なのだ。 この二人が日本政府とは無関係であれば、「当然、邦人保護の観点から適切に対応している」(9月30日菅官房長官記者会見)という対応で粘り強く対応すればいい。 しかし、万が一、なんらかの形で日本政府が関与していたなら、外交上の大問題となる。 中国政府に完全な弱みを握られる事になる。 おりから米中の間ではスパイ防止が外交上の熾烈な争点になっている。 それと関連してきょう10月2日の産経新聞はニューヨーク発共同を引用して、米CIA(中央情報局)が北京の米大使館で情報活動に従事させてきた複数の職員を撤収させたと報じている。 その理由として中国のサイバー攻撃によって情報が盗みとられ、米国のCIA活動が特定されるおそれが出て来たからだと米政府が判断したからという。 クラッパー国家情報調査官は9月29日の米国議会公聴会で、情報機関員が特定される可能性について。「非常に深刻だ」と懸念を表明している。 遅ればせながら日本も中国との情報戦争に巻き込まれつつあるということだ。 日本政府の情報収集体制と問題意識が希薄なだけに、この問題では日本政府は中国政府に太刀打ちできない。 ただでさえ負けている日中外交関係に加えて、情報戦という決定的に不利な問題が急浮上してきたというわけだ。 パンドラの箱をあけてしまった9月30日の朝日のスクープ記事だったという事である。 今後の推移から目が離せない(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)