□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2013年5月10日第335号 ■ ============================================================== WTO事務局長選挙を制した中国の戦略外交 ============================================================== TPPをはじめとした地域経済協力という名の保護主義がもはや世界の潮流となる中で、これまで世界の自由貿易体制の中心であったWTOもいまだ存在している。 それを確認させてくれたのが5月7日にジュネーブで行われたWTO事務局長選挙に関する毎日新聞の報道である。 その記事はこう書いている。米国や欧州など主要貿易プレーヤーはWTOでの交渉に見切りをつけて個別の地域貿易協定に軸足を移しつつありWTOの存在意義が問われている、と。 それはその通りである。 しかし、どんなに国連が平和維持に無力であっても国連が不要とならないように、WTO交渉が進まないからといってWTOが不要となることはない。 地域貿易協定の交渉もまた各国の利害が対立してそう簡単にまとまるはずはないからだ。 地域貿易協定の乱立による相互間調整が手間取り、結局はWTOに近づくことになるからだ。 何よりも地域貿易協定の優先は保護主義に陥り、過去の失敗を繰り返すおそれがあるからだ。 だからこそ地域貿易協定の推進と同時にWTOにも積極的に関与していく。これこそが正しい対応である。 そしてその事を見事に行っているのが中国だ。 WTO事務局長選挙を報じる記事の中で私は注目したのが次のくだりである。 すなわち今度のWTO事務局長選挙は、米、欧州連合、日本が支持するメキシコの候補と中国が支持したブラジル候補の一騎打ちであったという(5月9日日経)。 そして中国の後ろ盾を得たブラジル候補がほかの開発途上国の支持獲得を広げて最後に勝利したという。 米国、欧州が牛耳ってきたWTOであるが、その米、欧がWTOを軽視する隙に中国はWTOへの影響力を強めて行ったということだ。 GATT、WTO体制の下で最も裨益してきたのは日本だった。 GATT、WTO体制を維持していく役割は本来は日本が率先して担うべきなのに、対米従属の日本はそれができない。 それを見越した中国の戦略的外交の勝利である(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
新しいコメントを追加