□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2013年2月24日第140号 ■ ============================================================== TPP交渉参加問題の本当の苦しみはこれから始まる ============================================================== 筋書き通り安倍首相の訪米をきっかけにTPP交渉参加が既成事実化され、日米間のTPP交渉が始まることになる。 しかし安倍首相が「これで難題が一段落した」と思うのならそれは大きな間違いだ。 自民党内部の反対派をどう説得するか。それはもちろん大きな課題である。 しかしそんなことよりももっと大きな難問が待ち構えている。 それはこれから津波にように押しかけてくる米国の無理・難題の要求をどうはねつけるかということだ。 TPP交渉参加の是非をめぐる議論がさんざん繰り返されたことによって、国民はもはや米国の虫のいい要求を知ってしまった。 だから政府や官僚は個別交渉において安易な妥協は許されなくなった。 しかし米国はお構い無しだ。どんどんと無理を押し通してくるのである。 その好例を2月23日の毎日新聞の記事の中に見つけた。 すなわちその記事は、まだ安倍首相がオバマ大統領と首脳会談を行なう前からすでに日本政府は米国からの輸入車規制緩和の検討に入っていたという記事だ。 米国車を念頭に置いた外国車の輸入拡大のために「輸入自動車特別取扱制度」を緩和するという。 そもそも日本国内で自動車を販売する際には安全性や環境性能を厳しくチェックするため輸入車・国産車とも原則としてサンプル車を選んで車両審査する必要があることになっているのだが、輸入車に限っては、このサンプル審査を省略し、国内基準に適合する事を証明する書類の審査だけで輸入を認めるという優遇措置をとってきた。 これが「輸入自動車特別取扱制度」なのである。 ただしそれは年間輸入台数が2000台以下の社種に限った特例扱いだった。 その上限を米国の要求に負けて今度の緩和で引き上げるというのだ。 TPP交渉参加を控えてはやばやと譲歩し、少しでも米側の圧力をかわす狙いである事は明らかである。 ところが、そんな優遇措置で米側が満足する保証はない。なぜならば「国内では欧州車のほうが人気が高く、米国輸入車の販売が増えるかどうかは別問題」(経済産業省幹部)だからだ。 米国は自国の対日輸出が増えなければその目的が達成されるまで次々とあらたな要求をしてくるのである。 しかし米国車だけの輸入を増やすような政策はない。そんな政策を日本が取ろうとすればそれは他国との差別的優遇措置となり国際約束違反となる。 そう思っていたらきょう2月24日の朝日新聞が一面トップで報じていた。米国にとっては車は例外分野だと。すなわち米国自動車産業に不利になることは認めない、有利になることなら何でも要求する、という例外扱いを米国は求めているのだ。 これは笑い話である。 例外を認めてくれとオバマ大統領に頼み込むはずの安倍首相が、米国から自動車は例外にせよと命令された帰ってきたのだ。 米国は車の関税は下げない、日本市場への参入のための日本の障壁は変えろ、という一方的な例外要求である。 これが米国が日本に求めるTPP交渉なのである。 安倍首相は愚かな判断をしたものだ。 そんな米国に都合のいい理不尽なTPP交渉など最初から断っておくべきだったのである。 少なくとも米国と他の参加国の交渉がまとまるまで待てばよかったのである。 ただでさえ交渉が難航している米国と10カ国のTPP交渉などまとまる保証などない(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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