□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年5月18日第388号 ■ ============================================================== 「届かなかった」のか「届けなかった」のか。それが問題だ。 ============================================================== きょう5月18日の各紙が一斉に報じている。 尖閣沖衝突事件の中国人船長に対する強制起訴について那覇地裁が 公訴棄却の決定を下したと。 刑事訴訟法で規定されている2ヶ月間の期限内に起訴状が届か なかったからだという。 これはどういう事だろうか。 そのような重要な起訴状が「届かなかった」などということがある だろうか。 「届けなかった」のではないか。 その事を正確に伝えてくれているのが東京新聞の記事である。 すなわち東京新聞にはこう書かれている。 「那覇地裁は外交ルートを通さずに(日本の)法務省に起訴状の送達を 嘱託していたが、起訴から2ヶ月以上の5月15日までに船長に起訴状 が送達できず、刑事訴訟法の規定で効力を失った・・・」、と。 そして東京新聞はそれを具体的に次のように書いている。 「那覇地裁によると、(日本の)法務省が3月28日に(司法)共助 を求める文書を(中国)司法部に送ったが、司法部は5月15日『尖閣 諸島は自国の領土であり、日本の司法手続きを受け入れることはでき ない』として共助を拒否したという・・・」 驚くべき事だ。 中国の態度が驚くべきということではない。 中国の態度は周知のとおりだ。驚くにはあたらない。 司法部も外務部もすべてが中国共産党の方針で一致している。 驚くべきは日本の外務省が一切関与していないということだ。 官邸の姿がまったく見えない事だ。 司法当局官のやり取りのせいにして逃げている。 事件発生当時の対応と全く同じだ。 これを要するに届ける気が無かったということだ。 今度の事件は単なる司法当局間の問題ではない。 尖閣諸島の領有権という極めて大きな外交問題である。 それにもかかわらず外務省を通じて外交的に伝達を確実なものにする 意思がまったく感じられない。 しかも中国の司法当局が尖閣諸島は自国の領土であると言っている のにわが外務省は沈黙している。 その通報が期限切れ直前になされている事に何の驚きも示さない。 すべては織り込み済みなのだ。 こうなることは知っていながら事を荒立てないようにしていたのだ。 尖閣諸島問題に対する日本外交は間違っている。 彼我の立場の違いは違いとしても、外交的には常に明確に領土権を 主張し続けなければいけない。 外交で正しく主権を主張しないから軍事的に取り戻せという誤った 意見が出てくるのだ。 日中間の感情的対立を不必要にあおることになるのだ。 外交的に厳しく主権を主張し合っても、それがそのまま日中両国間 の関係悪化につながることはないし、そうさせてはならない。 中国関係の悪化をおそれて誤魔化そうとするからかえって日中関係 をこじらせているのだ。 検察官役の指定弁護士によると刑事訴訟法上は繰り返し起訴できる という。 指定弁護士はまた次のように述べているという。 「(那覇地裁の)決定内容を十分検討した上で今後どのようにすべき か判断したい」、と。 今度ばかりは外務省に仕事をさせるためにも是非とも控訴して欲しい。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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