□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年5月16日第383号 ■ ============================================================== 国際機関の幹部人事に見る日本の地位の低下 ============================================================== 誰もが気にとめなかったであろうが私にとっては興味深い記事が 5月11日の日経新聞にジュネーブ発として小さく掲載されていた。 それは世界貿易機関(WTO)の上級委員というポストをこれまで 日本の外務官僚出身者が占めてきたが、今年5月末で任期が切れる 大島正太郎氏(元駐韓国大使などを歴任)の後任に横田淳氏(現駐 ベルギー大使)を日本政府が押し込もうとしたら、WTOは横田氏を 認めず韓国の国際法学者である張勝和(チャン・スンファ)氏を選ん だ、という記事であった。 この人事が外務省に与えた衝撃ははかりしれないものがあったに 違いない。 5月末に任期が終わる大島正太郎という外務官僚は私の一年先輩に あたる人物だ。その後任として外務省が押し込もうとして韓国の候補 に敗れた横田淳駐ベルギー大使は私の二年後輩だ。 ふたりともよく知っている。現役時代は比較的懇意にしていた間柄だ。 彼らはいずれも外務省では評価され、出世組にあたる者たちだ。 だからもちろん無能ではない。 しかし彼らが取り立てて優秀であるということでもない。 ましてや通商紛争処理の最終的な裁定を担うポストと言われている 上級委員としての特段の専門的知見があるわけではない。 彼らが当然のようにして国際機関の幹部ポストを手に出来るのは ひとえに日本政府の後ろ盾があるからだ。 国際機関の幹部のポストは天下り先の少ない外務省にとっては数少な い天下りポストであり、そのポストを同僚との競争で手にした外務官僚 はその時点で就任が保証されたようなものだった。 ところがWTOは日本政府が後任者として決めた横田氏を就任させず、 韓国の国際法学者である張勝和(チャン・スンファ)氏を選んだのだ。 私はここに日本という国の国力の低下、政治力の低下を見る。 しかし考えてみればこれは当然なことなのだ。 巷では人事は熾烈な競争で決められる。 たとえその人事抗争に様々な取引が行なわれようともそれもまた競争 なのだ。 そして無能なものが場違いのポストにつけば業績低下などでてきめん にその弊害が現れ、組織の生き残りのために淘汰されていく。 官の世界だけが、国家権力に後押しされるだけで天下りポストを得ら れるという時代は終わったのだ。 それはまた日本という国が厳しい国際競争に生き残るためにも国民に とっていいことなのである。 了 おしらせ サタデーナイトライブ 天木×植草の時事対談 次回の時事対談のライブ配信は、5月26日を予定しています。 テーマは小沢控訴後の政局と日本の将来についてです。 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
新しいコメントを追加