□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年5月28日発行 第369号 ■ =============================================================== サミット報道のうそ臭さ =============================================================== おもしろい現象だ。日本の政治の劣化とともに日本のメディア の劣化が同時進行している。 いや、日本のメディアが劣化して、正しく報道してこなかった からこそ日本の政治が劣化したのだ。 サミット報道の一例を見てもそれは明らかだ。 今日(5月28日)の各紙が報じている首脳宣言を見ればわかる。 菅首相の唯一の売り込みである自然エネルギーについての言及は どこにもない。 原発問題で唯一言及されたのは「安全性の促進」であり、「日本 の事故から学ぶ」である。 重要議題であった中東問題などでの菅首相の発言はゼロである。 これは完全な菅サミット外交の失敗ということだ。 それにもかかわらず、日本の報道は、日本が主役になって最初に 発言させてもらったとか、近年では珍しく同じ首相が二度サミットに 出席した、などと書き立てる。 最初に発言を求められた理由は原発事故を起こした国だからだ。 二度サミットに出席したといっても、最初は首相になったばかりで 出席し、何も発言できずに存在感ゼロ、二度目は政権末期で何を言っ ても相手にされなかった、ということでしかない。 サミットがらみのウソ報道の中でも、その最たるものはオバマ大 統領との首脳会談をめぐる報道だ。 この首脳会談で菅首相の9月訪米が決まったという。 ところがこの報道振りがうそ臭い。 「日米が合意した」、というのはまだましであるが、ほとんどの 報道が「オバマ大統領が招待して菅首相がそれを受けた」と書く。 誰も首脳会談に立ち会ったわけではない。これは外務官僚が説明 した内容の垂れ流しだ。ウソだ。 首脳会談の前の5月27日の読売新聞がベタ記事であったが次の ように報じていた。 政府は、26日、延期が続いていた菅首相の訪米を9月に行ない たいと米政府に打診し、調整にはいった、と。 つまり日本側が頼み込んで9月にさせてもらったということだ。 しかも9月は国連総会にあわせたタイミングである。 その頃に日本の首相がどうなっているかわからないのにオバマ大 統領が菅首相を名指しで招待するはずはない。 日本の首相がだれであっても国連総会には出席する。その時に 首脳会談をしようというだけの話だ。 「(日米首脳会議が決まったことは)大きな外交成果だ」(菅首相 に近い民主党幹部ー9月28日日経)と自画自賛するほど、うそ臭さ がいや増す。 メディアは検証して記事を書け。どのような表現で招待されたのか、 そこをはっきり書いてはじめて読むに値する記事となる。 了
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