□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年5月25日発行 第360号 ■ =============================================================== 国際原子力機関(IAEA)調査団の調査結果に注目せよ =============================================================== 国際原子力機関(IAEA)の調査団18人がやってきて6月2日 まで原発事故を調査する。 しかしこの調査団の本当の重要性を正面から書いた記事はない。 ここにきて菅政権の初動ミスと情報隠蔽がもはや誰の目にも明らか になったが、実はIAEA調査団は事故直後に日本に来て独自調査を し、日本に警鐘を鳴らしていた。 それにもかかわらず日本政府はそれをまともに受け止めず、国民に 対しことさらに安全性を繰り返すことに奔走した。 今度の調査は、そのような日本政府のいかさま振りにあきれたIA EAが、初動ミスの情報が出始めたこの時期に、あらためて調査団を 日本に送り、再度独自調査を行い、そしてその結果を6月20日から ウィーンで開かれるIAEA閣僚会議に報告して、世界に日本政府の 対応の実態と放射線汚染状況を知らしめるためのものだ。 その頃まで菅政権が続いているかどうかわからないが、日本にとっ ては厳しい調査になる。 この事を見事に言い当てた記事を私は週刊朝日6月3日号に見つけ た。これは国民必読の貴重な記事だ。大手メディアは絶対に書かない 記事だ。 その記事で最も注目すべきは、震災一週間後の来日し、1ヶ月以上 にわたって滞在・調査したIAEA調査団に対する日本政府の無能、 不誠実な対応ぶりである。 あの時IAEA調査団は福島原発周辺の土壌から高度の放射能物質 を検出し、3月末にはそれを公開し、日本政府に避難地域の見直しを 勧告した。 それを枝野官房長官は「現状ではそうした状況ではない」と突っぱ ねたが、世界の報道機関はIAEAが公開したデータを報道し、 「日本は被曝データを隠している」という国際社会からの非難が一気 にひろまった。 これについては当時の日本の報道でも少しは書かれていた。 しかし、新聞はまったく書かなかったが、当時はもっとひどいこと が政府内部で行なわれていたのだ。 すなわち、IAEAは日本政府への正式な勧告前の3月25日に 外務省内で調査の報告会を開き、日本側は外務、文部科学、内閣府、 原子力安全・保安院から計10人が出席したが、説明が英語で行なわ れ(筆者註:当然である)、専門語が飛び交ったため、出席した官僚 らは内容をほとんど理解できず、官邸にまともな報告を上げられなか った(官邸筋)というのだ。 そればかりではない。調査を終えて離日する少し前の4月19日に もIAEAは日本政府に対して2回目の報告会を開いたが、日本側は これを無視しようとしたという。 さすがに誰か出なくてはまずいという声が内部で起こり、あの小佐古 内閣官房参与が慌てて出席させられたという。 その小佐古参与は被曝量を軽んじる政府を批判して辞任した4月末の 会見でこう述べていたというのだ。 「官邸、外務省などはIAEAとの連携の重要性に気づかず、機能 不全ともいえる状態だった」と。 もうこれ以上書く必要はないだろう。 IAEA調査団は日本国民にとっても世界にとっても極めて重要な 調査団であるが菅・枝野政権や官僚たちにとっては「招かれざる客」 なのである。 今度こそ日本政府はもう少しまともな対応をして欲しい。 今度こそ大手メディアは英語を勉強して調査団の活動と提言を直接 取材して、それを正しく、大きく報道して欲しい。 何よりも日本政府は調査団のいう事に耳を傾け、それを公表して正し い対応をとるようにしてもらいたい。 了
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