□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年2月14日発行 第101号 ■ ============================================================= 米国から押しつけられた憲法9条だからこそ意地でも守るという気概 ============================================================== 2月11日の各紙が、米議会調査局は日米同盟に関する最新報告書の 中で、集団的自衛権を行使する上で9条は障害になると改憲を求めた、 と報じていた。 その一方で、日本の今の政治状況下では9条改憲は困難だろうとも述べ ているという。 これほど見事に米国の考えをあらわしているものはない。 すなわち9条改憲を急ぐ必要は無い。集団的自衛権をはじめとした憲法 9条否定の日米同盟を後戻りできないほど進めれば、最後は憲法9条を 変えざるを得なくなる、日本国民の大勢がそれを当然視するようになる、 これである。 9条改憲はいわば米国の日本占領の総仕上げだ、というわけだ。 実はこれこそが私が繰り返し強調してきたことである。 護憲を本気で願うのなら「日米同盟の深化」こそ、何があっても反対しな ければならないのだ。 しかし、もちろん最後の砦である憲法9条改憲阻止の重要性を否定する ものではない。 最後の仕上げだからこそ、それをさせてはならないのだ。 どのように現実が憲法9条から離れても、憲法9条がある以上、つねに 違憲性という圧力が残る。違憲訴訟が続く。 この憲法改悪に対する「抑止力」は絶大である。 何があっても改憲を許してはいけないという気概こそ重要なのだ。 この議会報告書の記事を読んで私が思い浮かべたのは、竹内好(よしみ) の言葉である。 竹内好(1910-77)とは魯迅の研究をはじめ中国に関した多くの 業績を残す中国研究家であり評論家である。 数ある護憲団体の中に9条連(憲法9条―世界へ未来へ 連絡会)という のがある。 その9条連の会報誌である9条連2011年1月20日号に、影書房と いう出版会社の編集者である松本昌次という人が、雑誌「平和」1954年 5月号を引用して、竹内好(よしみ)の護憲観について書いていた。 すなわち竹内はアメリカから憲法が与えられた事に矛盾と不満を感じたが、 「勝手に憲法を作ったやつが、だんだんその憲法をジャマにし出した。自分 で憲法を作っておいて自分でそれを守ろうとしない。この虚偽に腹が立った」 という。 そしてこう思うようになる。「・・・日本国憲法は、アメリカも捨てたし、 日本の支配層も捨てている・・・だから日本の人民が、それを自分のものだ と宣言すれば、それは日本人民のつくりだしたものになる・・・」、と。 今日の言葉ではない。戦後間もない1954年の言葉である。 竹内は、アジア諸国侵略に狂奔した日本の近代を、生涯をかけて疑った 人物であった。西欧諸国に追従した日本知識人の「外発教養主義」を批判し 続けた人物であった。 どうすれば、内からの「人民の力」を結集して日本を変革できるか。 外から、あるいは上からではなく、内から生まれる力によって、みずからを 倒すのでなければ、真の改革は実現されない、と考えた。 それから半世紀以上もたった今こそ、この言葉が輝いている。 エジプトの市民革命を目の当たりにしてこの竹内の言葉がよみがえる。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)