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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

 菅・前原民主党政権の対露外交の何が間違いなのか    
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年2月12日発行 第97号 ■    =============================================================    菅・前原民主党政権の対露外交の何が間違いなのか                       ==============================================================  菅・前原民主党政権の対露外交はまったくお粗末だ。  前原外相の訪露・外相会談を報じる今日(2月12日)の新聞の 見出しは次のような言葉で埋め尽くされている。  「対ロ外交、袋小路に」(日経)  「日ロ険悪 厳冬期」(朝日)  「成果は『交渉継続』のみ」(東京)  「北方領土で平行線」(毎日)  「プーチン首相 近く北方領訪問か」(読売)  その記事の内容を読めば、不毛な外相会談だった事が更にわかる。  なぜこんなに不毛、かつ対立的になってしまったのか。  それは菅・前原民主党政権の対露外交の稚拙さにある。  言うべきでない事をいい、言うべきことを言わない外交が不毛に しているのだ。  領土問題はお互いに譲れない問題だ。建前を崩すわけには行かない。  だからこそ、その建前論を周到に行なわなければならないのだ。  相手国はもとより、第三者に対して、感情論を排し、説得力を持つ言葉 を駆使して行なわなければならない。  今回の外相会談の直前に、菅首相がメドベージェフ大統領の国後島訪問 を「許し難い暴挙だ」と非難した。  「北方領土の日」の式典列席者の前で、日本の首相としての強さを見せ ようとサービスしたつもりだったのだろうが、外交的には軽率な発言だ。  それをロシア側が硬化の理由として利用したのは当然だ。  相手のミスを最大限利用してみずからの立場を主張する。それが外交の 鉄則であり駆け引きだ。  しかし私が菅・前原民主党政権の外交をここで批判するのは、その事 ではない。  ロシアもまた大きな誤りを犯した。それになぜ気づかないのか。なぜ追及 して外交上有利な立場に立とうとしないのか、これである。  ロシアの誤りとはなにか。  それはロシアが北方領土でロシアが軍の増強を行なおうとしていることだ。  2月11日の朝日が報じ、2月12日読売が後を追った。  もしこの動きが正しければ日本はこれを世界の前で厳しく追及すべきだ。  ロシアに対しそれを止めさせるべきだ。  応じなければ国連安保理に緊急会議を求め動きを見せてロシアを牽制 すべきだ。  武力で紛争を解決してはならない、とするのが戦後の国際社会の一致 した合意であり、国連憲章の精神である。  米国がイラク攻撃をここまで批判されるのも、国連を無視して行なった からだ。  米国がどんな詭弁を弄してそれを正当化しようとしても国際社会はそれを 認めない。  その誤りをロシアが北方領土問題で行なおうとしている。  領土問題を武力で解決しようとすることはまさしく国連憲章で禁じられて いる事だ。  政治的にいくら激しい言葉を応酬しても、それは許される。それが外交 である。  しかし、それを軍事的圧力に発展させる事は、如何なる意味でも許されない。  ロシアは調子に乗って大きな誤りをおかそうとしている。  それをなぜ日本は追及しないのか。  それこそが憲法9条を世界に誇る日本がもっとも強く主張できるところだ。  平和国家日本の特権である。  なぜ菅・前原民主党政権はその事に気づかないのか。  ロシアの北方領土における軍事増強の動きを牽制する事は、憲法9条を持つ 平和国家日本を世界に訴える好機だ。  北方領土を実効支配しようとするロシアの一方的な行動を抑止できる。  一石二鳥である。  格好の敵失を得たのに、それを最大限に利用できない菅・前原民主党政権。  ことごとく外交で行き詰まるのも無理はないと思う。                               了                               

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