□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年1月9日発行 第14号 ■ (恐縮です。先ほど発行した第13号は9日発行の表記間違いでした) =============================================================== イスラエルに名を借りて憲法9条批判をする毎日新聞は卑怯だ =============================================================== 読者の皆様にはお分かりだと思うが、イスラエルのパレスチナ政策と 憲法9条問題は、私の二大関心事である。 だからその二つが同時に登場する論説は私の関心をいやがうえでも 惹きつける。 1月9日の毎日新聞の論説「反射鏡」がそれであった。布施広という 専門編集委員が書いていた。 とりわけその中で私の目が釘付けになったのは次のくだりである。 ・・・ヘブライ大学名誉教授で勲二等瑞宝章を受けたベン・アミー・ シロニー氏はこう言っている。 ユダヤ人はホロコースト、日本人は原爆投下。ともに大きな悲劇を経験 したが、第二次大戦後正反対の道を歩いた。 ユダヤ人はイスラエルを建国し、「自分たちは弱すぎたから悲劇を味わ った」と考えて外敵(アラブ)に身構えた。日本は逆に「軍事力への信頼が 強すぎた」と反省して軽武装国家の道を選んだが、尖閣後は「自分たちは 弱すぎる」と感じているかもしれない・・・ とんでもない皮相的なシロニー氏の発言だ。 「自分たちが弱すぎる」と思う国民は確かにいるだろう。しかしそれは 決して日本国民の総意ではない。 しかし私が腹を立てたのはシロニー氏に対してではない。 たとえシロニー氏がそう語ったとしても、それはシロニー氏の自由だ。 私が許せないと思ったのは、シロニー氏の言葉を引用する形で憲法9条は 時代遅れだ、と言わんばかりの布施広氏の卑怯さである。 彼はこう続ける。 「パレスチナを占領し、敵対国の核施設などを『防御的先制攻撃』で 破壊して安全を担保してきたイスラエルに対して、日本は『平和を愛する 諸国民の公正と信義に信頼』して『安全と生存を保持しようと決意した』 (憲法前文)国である。 その日本も戦後65年にして考え込まざるえない点に、今の国際情勢の 危うさがあるように思える。そもそも中国やロシア、北朝鮮を『平和を愛 する諸国民』とみなしていいのか。重大な疑問が平和立国・日本を立ち すくませる・・・」 たかが毎日新聞の戦後生まれの一編集委員が、戦禍に苦しみ、二度と軍事 大国にならないと決意して死んでいった先達が守ってきた憲法9条の精神を、 ここまで軽々しく否定する事を許していいのか。断じてない。 新聞は特定の思想や組織の広報誌ではない。 公器である。社会の木鐸である。 毎日新聞は社をあげて大いに反省すべきであると思う。 了
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