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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

産経新聞記事から読み取る米・中・日関係の虚実 
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年1月10日発行 第15号 ■     ===============================================================    産経新聞記事から読み取る米・中・日関係の虚実         ===============================================================  米中日三カ国の関係がどのように展開していくか、それは今後の日本の 国益にとっての最大の問題である。  だからこそ米中日の関係をどう構築していくか、それは日本外交の最大の 懸案である。  この事について異論を唱える者はいないだろう。  それではどうすればいいのか。  この事を見事に物語る対照的な記事を今日(1月10日)の産経新聞に 見つけた。  一つは胡錦涛中国国家主席の訪中に関する米・中・台湾の報道を並べて 紹介しているオピニオン欄「環球異見」の記事である。  中国の報道(中国新聞週刊)は、要旨こう書いているという。  今回の(胡錦涛)訪米は、新しい中米関係にとって大きな出来事だ。象徴的 な首脳会談に終わらせることなく、両国の相違を直視し協力関係を進めるべき だ。双方とも朝鮮半島の平和と安定を望んでいる。  米国の報道(ニューヨーク・タイムズ)は、要旨こう書いているという。  米中両国が胡錦涛国家主席の訪米を通じて現実的な成果を生むためには、 双方が共同宣言でそれぞれの国家的利益を超えて協力態勢を敷く決意を明確に すべきである。(米中)国交正常化から30年を経て米中の相互依存は過去に ないレベルに達しており、両国間に東西冷戦のような先鋭的対立が入り込む 余地は少ない。  台湾の報道(旺報)は、要旨こう書いているという。  今回の訪米は両岸(中台)関係にとってプラスになる。中米共同声明では (中米)双方が中台経済協力の大きな進展を歓迎するにとどまり(台湾問題 は米中間の対立のテーマにはならない)、現在の中台の良好なムードを破壊 することはないだろう。  この三つの論調が言っている事は、要するに、米中関係はその違いを抑えて 相互協力を進めていくだろう。それを台湾も歓迎する。米中の間の最大の安全 保障上の問題である台湾有事は遠のいた、ということである。  素晴らしい胡錦涛訪米の分析記事だ。  産経新聞が素晴らしいのではない。引用した中・米・台湾の記事が素晴らし いのだ。  その一方で産経新聞は次のような記事を外交欄に掲載していた。ワシントン 発佐々木類記者の記事である。  中国への安易な妥協の姿勢を示せば日韓両国の反発を招き、事態がより 複雑化することへの懸念も(米国には)ある。   オバマ大統領が09年11月に訪中した際の共同声明には、中国側が主張 した「お互いの中核的な利益の尊重」という表現が明記された。南シナ海を 核心的利益と位置づける中国が軍事的行動を活発化していた時だけに、日本 政府は「譲歩しすぎの内容に驚いた」(外務省筋)経緯がある。このため 日本政府は(今回は北朝鮮問題や安全保障問題で中国に安易な妥協をすべき ではないという)日本の立場をすでに米政府に伝達している、という。  馬鹿げた産経新聞の記事だ。  産経新聞の記事が馬鹿げたというよりも、その記事に書かれている日本政府 の対応が事実だとしたら、こんな馬鹿げた外交はないということだ。  絶対服従の日本政府が米国にそんな申し入れが出来るというのか。  みずからの外交・安全政策に関し米国が日本のいう事を聞くというのか。  そもそも米中間の協力関係が進む事のどこが悪いのか。日本こそ米国に先駆 けて協力関係を働きかけるべきではないのか。  こんな馬鹿な外交をやっている暇があったら、ある日突然米国が中国や北朝鮮 と手を結ぶ時のために、「はしごを外された」と臍を噛まないように手を打って おくべきなのだ。  今日の産経新聞の記事は、米中日関係の本質問題を見事に提起してくれた。  外務官僚の言いなりになってピント外れの外交を繰り返す菅民主党政権の 姿を見せつけてくれた。                                 了

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