□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年11月9日発行第188号 ■ =============================================================== 米国がインドの国連常任理事国入りを支持したというニュース =============================================================== 私が今日(11月9日)のニュースでもっとも注目したのが、「米国がインド の国連常任理事国入りを支持した」というニュースである。 その理由は、これでインドの常任理事国入りが近づいたというからではない。 米国が日本よりインドを優先し、そのことによって日本の常任理事国入りが 遠のいたということではない。 インドは日本がブラジル、ドイツなどと一緒になってともに安保理常任理事国 入りを果たそうとした仲間である。 しかし日本の国連常任理事国入りに最も反対した国が韓国であるように、 それぞれの国にはその地域からの強力なライバルがいる。 たとえばドイツにはイタリアが、ブラジルにはアルゼンチンが、インドには パキスタンが、といった具合だ。 おまけにアフリカや中東がなぜ我々の地域から常任理事国が選ばれないのか、 と強力に反対する。 米国が支持したからといってほとんど役に立たないのだ。 そのうえ現在の常任理事国5大国には拒否権という特権がある。 彼らが認めない限り如何なる改革も有り得ない。そして彼らが特権を手放す ような事を認めるはずは無い。 そもそも常任理事国改革などは今の国連の枠内では不可能なのだ。 国連そのものを解体しあらたな国際機構でも作り直さない限り日本やインド の常任理事国入りはありえない。 それを数年前の国連改革騒動の過程で各国は嫌というほど知らされた。 それなのにいまだに国連安保理改革がニュースになるのは、仕事のない外務 官僚が国連安保理入りを仕事にしようとして無駄に動いているからである。 そんな外務官僚にニュース源を依存する日本のメディアが外務官僚の片棒を 担いでいるからである。 私がこのニュースを知って今更ながらに感じたのは米国の無責任さである。 そしてそんな米国の無責任な発言の片言隻句を、さも一大事のように報じる 日本のメディアのおめでたさである。 このニュースを報じる各紙は、「米国が、日本以外の特定国の常任理事国 入りの支持を明言するのは初めてである」と判で押したように書いている。 これがすべてを物語っている。 日本のメディアが言いたい事は、米国は日本だけを支持してくれていたのに、 なんだインドも支持したのか、ということだ。 それだけでは見も蓋もないので、それは中国を牽制する米国の意志の表れだ、 などとこじつける。 独り相撲の解釈だ。囲碁で言う勝手読みである。 そもそも米国は常任理事国拡大などに関心はない。ましてや日本の常任 理事国入りなど望んでいない。 それを見事に証明する記事を私は見つけていた。11月10日号のニューズ ウィーク日本語版においてハーバード大学のエズラ・ボーゲル名誉教授がこう 言っている。 日中両国は大人の関係を構築すべきだ、歴史認識で低姿勢を繰り返す必要は ないが日本の戦争責任を若い世代に正しく伝えろ、日米関係は重要だが、その 目的が「反中連携」になってはいけない、と。 これが米国の本音だ。 そのエズラ・ボーゲル氏が国連改革で次のように断言していた。 「日本が国連の安保理の常任理事国になる可能性はない」、と。 これは物凄い発言である。 しかしこれが、米国の考えている事である。 しかもこのような米国の立場は今にはじまった事ではない。 かつて日本が安保理常任理事国入りで必死に奔走していた2002年当時に 実際にあった話だ。 わが国連代表部大使が米国のネグロポンテ国連大使(当時)に日本の常任 理事国入りの支持を頼んだ時の事である。 「そんな問題があるとは知らなかった。部下によく伝えておく」ととぼけた のである。 ここまで日本は米国に裏切られているのである。 外務官僚はそんな米国の正体を知っている。いやというほど体験している。 それでも日米同盟を重視して対米従属を繰り返すのである。 外務官僚もメディアも、そろそろまともな仕事を始めたほうがいい。 了
新しいコメントを追加