□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年10月8日発行第135号 ■ =============================================================== 官僚の情報に頼りきった新聞記者の甘えを見る思いだ =============================================================== 少し前の記事であるが9月27日の毎日新聞「時流 底流」というコラムに、 「外交文書公開 改善を」という見出しの記事があった。 てっきり、外務省はいまだに情報公開に後ろ向きなのか、と思って読んだ。 メルマガで取り上げて外務省を批判する格好の記事だと思って読み進めて 行った。 ところが読み進むにつれて、これは新聞記者たちのとんでもない甘えの記事 であることに気づいた。 その記事を要約すればこうだ。 「・・・岡田克也外相の肝いりで外務省は30年経過した外交文書の原則 公開を始めた。 この制度は既に1975年から始まっていたのだが外務官僚による作業は 滞りがちでとても規則を守れない。公開期限を迎えながら未公開の文書が たまりにたまって約2万2000冊。 そこで今年5月に外部有識者らによる「外交記録公開推進委員会」がつくら れ、政務官らも関与して規則通りの公開を行なうことになった。 ところが7月に公開された外交文書に際しては、これまで行なわれていた 外務省の事前説明がなくなっていた。 外務省は情報公開を始めた76年から2008年までは、公開の3-4週間 前にクラブ記者に概要説明を行なってきた。それに基づき記者たちは専門家に 意見を聞きながら重要な文書を見分け、記事にしていた。 しかし7月に行なわれた文書公開では、わずか一日前に概要を説明した文書 が配布されただけで、記者への説明は中止となった。 外務省に問いただしたら「歴史的な意義などは『文書をして語らしむ』という ことだ。『官』が報道内容をリードするのは好ましくない」(外交記録・情報 公開室)と説明するばかり。 これでは、文書公開が進む反面、外務省自身の説明姿勢は後退する事になる。 政府の考えを説明する責任は外務省にある。今後の運用改善が求められる・・・」 私は記事の読み間違いをして読者から指摘されたことがあった。だから関心の ある読者は念のため毎日新聞のその記事を読んで判断することをお勧めする。 しかし私は今回は読み間違っていないと思う。私の考えが正しいと思う。 外務省が長年繰り返してきた事前ブリーフを突然止めた事に記者たちが反発 する気持ちはわかる。 三十年以上も続けてきた慣例を理由無く破っておきながら、「歴史的な意義は 文書をして語らしむ」などと格好のいい事を外務省が言っても白々しい。 概要説明を止めたのは文書公開の量が急増して作業が追いつかないだけだ。 しかし、そもそも30年もの間、外務省がやって来た事はメディアへの過剰 サービスなのだ。 そのような過剰サービス、つまり事前の周到なブリーフィングがあったから こそ、各紙は同じ日に、同じような解説報道を流すことが出来たのだ。 岡田外相が記者への事前説明は止めろと指示したのならいざ知らず、外務 官僚たちだって記者たちにサービスしたかったに違いない。 しかしそれが出来なくなったということだ。 外交文書の情報公開にともなう作業は高度な専門知識と判断能力を必要と する。 ところが外務省はそれに携わる職員に能力のある人材を充ててこなかった。 それどころか評価の低い職員を振り当ててきた。 彼らには判断能力や解説能力はない。外務省としてもその作業を専門家任せ にしてきたのだ。 情報公開の徹底化により作業が増え、とても手が回らなくなったのだ。 新聞各社はもはや甘えられなくなった。情報公開された後、各社はそれぞれ が雇う専門家と一緒にその公開文書を読み解き、その意義を読者に解説して 伝えなければならない。 それは文字通り大手新聞各社のガチンコ勝負だ。もはや各紙が一斉に同じ ような解説記事を書く事はできなくなった。どの社が早く、的確な解説記事を 掲載するかだ。 読者はそれを見て各社の能力と意気込みを比較する。 政府の流す御用記事を流して事足れり、として来た新聞各社にとっては 厳しい時代になっただろうが、競争をしてこそ、いい記事が書けるのだ。 そして読者はそれを期待している。 読者の要望に応えてこそ、新聞記事もまた鍛えられるということだ。 了 おしらせ ベンジャミン・フルフォードと天木直人の講演会が以下の通り開かれます。 記 テーマ:民主党政権に任せたら日本はどうなる?今すぐ日本を良くする処方箋 (構成: 天木直人講演、ベンジャミン・フルフォード講演、ベンジャミン VS天木氏による対談、質疑応答) 日時: 2010年10月9日(土) 14:00~17:00(受付は 13時半から) 場所: 千駄ヶ谷区民会館 2F (東京都渋谷区神宮前1-1-10) アクセス: JR山の手線 原宿駅「竹下口」 徒歩6分 費用: 3000円 (学生2000円) 申し込み方法: 氏名、連絡先 、参加人数、支払い方法(持参又は振込み) を明記の上、 メール(benjaminoffice88@gmail.com)にてお申し込み下さい。 問い合わせ先: ベンジャミン・フルフォード事務所 (benjaminoffice88@gmail.com)
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)