□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年9月3日発行 第76号 ■ =============================================================== 日本を守ることより米国の顔色をうかがう日本の防衛政策 ================================================================ 国民の命と生活を守る国防は政府の最重要政策であるはずだ。 その政策に取り組む姿勢は真剣なものでなければならないはずだ。 ところがこの国の防衛政策、特に自衛隊の装備配置を見るにつけ、この国の 政治家・官僚は国民を守るより米国の顔色をうかがう事を優先している如くだ。 この事を私は様々な実例を挙げて繰り返し強調してきた。 たとえば最近の典型例が次期戦闘機の選定をめぐる混迷だ。 戦闘機が老朽化し、その戦闘能力が国際的に劣るようになっているのであれ ばそれを最新型に代えることはいい。 米国の最新戦闘機が優れているのならそれを優先的に購入するのもいい。 しかし米国がF-22の開発を止め、それに代わるF-35も配備にも問題が あるのなら、次善の策として、それらと遜色のない欧州のユーロファイターを 選定する事を考えるのは自然だ。 有事はいつ起きるかもしれないのであるから、戦闘能力は切れ目なく維持しな ければならないはずだ。 老朽化した戦闘機で何年も我慢するということは防衛力、抑止力の観点からは 許されないはずだ。 ところが、日米同盟への悪影響を恐れて、あくまでも米国の戦闘機購入を優先 するという。 2011年度の予算要求では次期戦闘機の導入を先送りし、米国の戦闘機が 購入できるようになるまで待つと言う(8月29日読売)。 これが日本を守ることより米国の顔色をうかがって決められる日本の防衛政策 なのだ。 その驚くべき例をまたひとつ見つけた。 発売中の情報誌「選択」9月号に、航空自衛隊は来年度(2011年度)の防衛 予算で沖縄にパトリオットミサイルPC3を配備する事を決めたという記事を見 つけた。 これは素人の目からみてもおかしい配備である。 当然のことながら、これまでPC3は、入間(埼玉)、岐阜、春日(福岡) などの本土に配備され、政治・経済の中枢や人口過密地域を守るように配慮され ていた。 それは日本を守るという国防の観点から当然だ。 しかし沖縄はそのいずれにも該当しない。 なぜ沖縄に高価な迎撃ミサイルシステムを配備しなくてはならないのか。 防衛関係者は「嘉手納基地をはじめとする米軍を守るためである」と言う。 いかなる脅威から米軍を守るのか。 それはズバリ中国の脅威である。なぜならば北朝鮮のテポドン1号は沖縄に は届かないからだ。テロの脅威にはミサイルは要らない。 「選択」のその記事はこう締めくくっている。 「・・・PAC-3の沖縄配備は普天間基地の移設問題でこじれた日米関係を 修復する『日本側の誠意』でもあるのだ・・・」 米国を守るために沖縄に地対空ミサイルを配備するという滑稽さ。 米中はお互いを必要としており近い将来に米中有事など起きるはずはない事は 誰の目にも明らかなのに中国が米軍基地を狙うと考えるピントはずれ。 膨大な税金の無駄遣いである。もっと有効な防衛予算の使い方があるはずだ。 パトリオットミサイルPAC-3が沖縄に配備されるなどということを報じる メディアは一つもない。 だから国民は何も知らないままだ。 ただでさえ国民に知らされない我が国の防衛政策。 その防衛政策が防衛官僚の一存で勝手に決められ、使われる。 こんな事を放置していてはいけない。 防衛予算の事業仕分けは国民の前で徹底して行なわれなければならない。 それはおよそ防衛政策に無知と思われる蓮舫議員でも十分行う事ができる。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)