□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年9月2日発行 第75号 ■ =============================================================== ロシアの大森林火災と「核の危険」 ================================================================ 民主党代表選挙が始まりメディアはこのことばかり報じるだろう。 それは無理も無い。戦後の政治史で初めてといっていい国民監視の権力闘争 である。明確な政策対立の下にこの国の指導者が選ばれる選挙である。 メルマガの読者は既におわかりと思うが、今度の民主党代表選挙についての 私の立場は断固小沢支持である。 その事を9月1日の共同記者会見を見た感想としてその日のブログで書いた。 私は既存の政党、政治家を全否定する立場である。 私は小沢信奉者ではない。それどころか私が最も重要視している日米軍事同盟 からの自立について小沢氏の立場はいぜん不明確である。 しかし私は菅首相に裏切られたという強い思いを持っている。 権力を手にしたとたん豹変する現実主義者を私はもっとも嫌う。 9月1日の共同記者会見で小沢氏に対する個人攻撃に終始する菅首相の姿を 見て私の菅氏に対する失望は決定的になった。 これ以上菅政権が続いては、官僚支配が続いていく。なによりも日米軍事同盟 が固定化していく。 ここはなんとしても小沢一郎に一度この国を任せてみたい。そう思っている。 小沢氏でもダメならその時こそこの国の政治改革が不可避になってくるだろう。 政治は混乱の極みになるだろう。 しかし私は政治の混乱を歓迎する。政治の混乱こそ国民主権の裏返しだ。政治 の混乱を繰り返す事によって国民のための政治がより近づいてくる。そう私は 思っている。 私のメルマガの目的は、メディアが報道しない一つでも多くの真実に近づき、 世の中の動きを正しくつかみ、正しい判断をする。そのヒントを提供する事だ。 もちろん一人の力には限度がある。読者の協力により更にその活動の幅を広げ て行きたい。大げさに言えば読者とともにあらたなメディアを作って行きたい。 そう思っている。 今日のメルマガはまさにその一つである。 少し前の事になるがメルマガの読者の一人から、次のようなメールが寄せられ た事があった。 すなわち、8月はじめに起きたロシアの森林火災が日本でも報じられたが、 その火災が放射能汚染の危険に及んでいることを知らせるニュースはほとんど 見られない。インターネット上では放射線被害の危険性が指摘され、欧米諸国 では避難勧告などが出されているというのに、なぜ日本のメディアは騒がず、 在ロシア日本大使館は在留邦人に対して警告をしないのか。なにか隠蔽されて いるのか、と。 この指摘を受けて私はあらためて問題意識を持った。 ロシアの森林火災が深刻な影響をロシアに及ぼしている事や非常事態宣言が 発せられたこと、そしてプーチン首相自らが消火に乗り出した事はニュースで 知っていたつもりだが、放射線被害の危険性については認識不足だった。 改めて日本の過去の報道振りを調べて見た。たしかにロシアの森林火災と 放射線被害の危険を正面から書いたものはない。 そう思っていたら今週発売の週刊アエラ9月6日号に「ロシアでの『核の 危険』」という記事を見つけた。 ジャーナリスト横村出氏によるその記事は、要旨次のように書いていた。 ・・・緊急事態省によれば一般の立ち入りが禁止されている核閉鎖都市まで 4キロ地点に火災が迫った。ここは核兵器を開発・製造する連邦原子力センター があり、2万人以上が働く核の拠点・・・軍が総延長8キロの溝を掘って水を 流し延焼を食い止めた・・・ 報道よれば、国営原子力企業ロスアトムのキリエンコ総裁は、メドベージェフ 大統領に「核への脅威はない」と報告した。だが、核閉鎖都市での取材は許され ず実情はわからない。モスクワタイムズだけは、消防筋の情報として「閉鎖都市 の境界を超え市内2ヶ所が燃えた」と報道・・・ そして横村氏の記事は、あのチェルノブイリ原発事故による汚染地帯を含め 多くの場所で火災が起きていた事、環境保護団体の指摘で当局が「情報秘匿」 した事を認めた事、ロシア各地にある100基前後ある大陸間弾道ミサイルの 基地や退役後の備蓄庫、原発の多くに及ぼす森林火事の危険については一切公表 されていない事、などを明らかにしている。 情報公開の責任はもちろんロシアにある。 しかし、この横村氏の記事のような警告が大手メディアに一切見られないのは なぜか。モスクワの日本大使館が在留邦人に危険性を一切警告しないのはなぜか。 何らかの配慮によって事故を過小評価しているのなら問題だ。 単なる取材力不足や問題意識の欠如であればなおさら問題である。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)