□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年9月4日発行 第77号 ■ =============================================================== 政治的中立を逸脱した日本の大手メディア ================================================================ 日本のテレビや全国紙は政治的中立を逸脱し、特定の政党、政治家を支持し たり、貶めたりしているのではないか。 そういうメディア批判が最近特に頻繁に言われるようになった。 メディアの政治的中立性は民主主義の基本である。だからこそ放送法などで それを求める規定がある。 政府広報誌や特定政党の機関誌ならいざ知らず、国民の多くに影響を及ぼす 全国的なメディアが政治的に偏向した報道をするなどということが許されるはず はない。 もちろん個々の報道各社は各自の政治的スタンスがある。それに基づいてある 程度の政治的偏りがあるのは自然だし、だからこそ読者は自らの考えに近い メディアを好んで読む。 ところが、その許容範囲を超えて大政翼賛会的に大手メディアがこぞって一方 的な報道をしたらどうなるか。 私は9月2日に行われた日本記者クラブの共同記者会見の模様を見ながら、 今度の民主党代表選をめぐる報道機関の姿勢は明らかに反小沢であると思った。 その事は、記者会見の模様を報じる翌3日の各紙の報道振りを見ても明らかだ。 私はたまたま共同記者会見の模様をテレビではじめから終わりまで見た。その 時の記者の質問振りやカメラ目線などは明らかに小沢氏に敵対的であった。質問 内容は小沢氏に辛らつであった。 これに対し小沢氏は丁寧に答えていた。 それとは対照的に菅首相に対するメディアの関心は低く、また菅首相の答えは 精彩を欠いた官僚答弁に終始した。 ところが翌日の新聞ではその模様がまったく伝わってこない。 この事についてはインターネットで多くの者が指摘しているところであるが、 その中でもっとも私の思いを的確に表現したものを見つけたので以下に引用して みる。 「公開討論を最初から、最後まで見た。自分の目で見、耳で聞くと、総てが 解明される。汚れたレンズを通さないと言うのは、いいものだ。日本の知性は、 無惨です。昔は、あこがれの職業だった。記者の質問と小沢さんの回答では、 小学生と教授の差だった。小沢さんも吃驚されただろう。こんなことも知らない 人間を、公開討論の質問者に選ぶ記者クラブの質を。オープン化させ、日本人の 知性の劣化を、押しとどめねばと、思われたでしょう。また、明確に証明された のは、記者の傲慢ぶりと、小沢さんの謙虚さだ。これを見て、まだ政策より政局 の小沢などと言ったら、鼻先で、素人に笑われるだろう。新聞が、売れなくなる 訳です。コンビニでも午後2時過ぎに行ってもほとんど売れ残っている。庶民は、 正直で、賢明だ。マスコミより、庶民の方が上です。」 その通りだと思う。 それでも私は大手メディアのすべてを否定する気にはなれない。 毎日目を通している新聞各紙やテレビニュースから学ぶ事が多いからだ。 大手メディアの影響力は大きいし、だからこそ大手メディアに正しい報道を してもらいたいと思うからだ。 そして大手メディアの記者たちのすべてが劣化しているとは思わないからだ。 大手メディアの若手の記者の中にはジャーナリズム精神を忘れていない記者が おり、それらの記者が書く良質な記事に感銘を受けるからだ。 悪いのは幹部政治記者なのだ。 地位を得て保身に走り、ジャーナリズム精神を忘れて権力者に媚びる、そんな 幹部政治記者たちはもはや用済みである。 その事を見事に証明する記事を9月4日の朝日新聞に見つけた。 編集委員の星浩氏が「記者有論」の中で先般自殺を図ったNHKの元解説副 委員長であった影山日出夫氏を偲んでこう書いていた。 影山さんとは家が近くなので通勤電車でよく一緒になったという。その時の エピソードをこう語っているのだ。 「・・・影山さんは電車の中でいつも、カバーをつけた本を読んでいた。 『どうしてカバーを』と聞いた事がある。『政治家の本を読むことがあるが、 NHKの解説委員が特定の政治家の本を読んでいることが見られると、あらぬ 誤解を招きますから』 政治家の討論を仕切るには、常に中立・公正でなければならない。アンパイア シップ(審判魂)とも言うべき責任感だろう。まさに『解説委員の筋目』である・・・」 私はここで影山氏のエピソードの真偽をとやかくいうつもりはない。それは おそらく事実だろう。 しかしその影山氏の自殺の真相については全くと言っていいほど大手メディア は追及しない。 官房機密費絡みで悩んだ末の自殺だとか、官房機密費絡みで詰め腹を切らせ られた事に対する抵抗の自殺だ、などという噂が後を絶たないというのに、 である。 それを知らないはずはないのに、他人のエピソードを引用して政治記者の中立 性を強調してみせる星浩氏。 そういえば星氏は2日の記者会見の質問で小沢氏に「政治とカネ」の話ばかり 質問を浴せていた。 そのあからさまな偏向に対して寄せられたであろう批判をかわすための自己 弁護を朝日新聞紙上の自らのコラムでやっているのだ。 やはり大手メディアの幹部政治記者は使い物にならない。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)