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三枝玄太郎のニュース解説

三枝玄太郎(元産経新聞記者 フリーライター)

三枝玄太郎

参院選での復活を試みる蓮舫氏が応援に入った松下玲子氏が苦戦 立憲民主党に勢いがある今回の衆院選で、なぜ「革新の牙城」は傾向が異なるのか。
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 2024(令和6)年7月に投開票が行われ、一時は小池百合子・東京都知事を破るのではないか、と言われつつ、後半失速し、まさかの石丸慎二候補にまで抜かれ、惨敗。その後は表立った活動をやめていた蓮舫氏が立憲民主党候補の応援演説の弁士として姿を見せている。衆院選に出馬するか、注目されたが、出馬を見送った。

 だが、立憲民主党が好調なことに気をよくしたのか、東京18区の新人で元武蔵野市長の松下玲子氏(54)、東京24区で萩生田光一・元幹事長(61)とデットヒートを繰り広げている有田芳生氏(72)の応援演説に相次いで姿を見せた。蓮舫氏は「白いスーツを着るのは久しぶりです」と切り出して演説を始め、舌鋒鋭く、能登半島地震の復旧に岸田政権が予備費しか支出せず、石破政権で補正予算を編成せずに国会を解散させたことを批判した。

 東京18区は概ねどのメディアも自民党から出馬した元農水省官僚の新人、福田かおる氏(39)を松下氏がリードしていると情勢を分析していた。東京18区は武蔵野市、小金井市、西東京市が範囲だ。武蔵野市は東京都内でも屈指の革新系が強い自治体で、小金井市は、武蔵野市よりもさらに左派色が強いと言われている。3市の中では最も人口が多い西東京市だけが保守の強い地盤だ。

 当初は松下氏には楽勝ムードがあった。菅直人・元首相(78)が政界引退を表明し、菅氏の秘書を務めていた松下氏。東京都議や武蔵野市長を2期8年務め、実績も豊富だ。

 20日にJR吉祥寺駅北口で演説した野田佳彦代表(67)は「絶対大丈夫だと思っていたが、相手も手ごわい。居ても立ってもいられず今日は来ました」と支持を訴えた。

 それでもまだ野田氏の口ぶりからは余裕がうかがえた。ところが、松下氏の陣営スタッフは24日、こんなことをX(旧ツイッター)に書き込んだ。

 「実は大変な事になりました。 最新の調査でかなり負けていると報告されました。 新聞や週刊誌では接戦とか、少し前に行っているとか報道されていますが全く違います。 極めて厳しい数字です。自民党政治を終わりにしたい方、日頃松下玲子を応援してくれているみなさん、安心して暮らせる世の中を求める方々、どうかみなさんの周りの人に『松下玲子が危ない』と伝えていただけませんか。 選挙区は武蔵野市、小金井市、西東京市です。どうか皆さまの力をお貸しください。」

 どういうことなのだろうか。松下氏は2021(令和3)年、市長2期目に、外国人にも住民投票権を認める条例案を議会に提出。だが、「事実上の外国人参政権につながる」などの批判が強く、市議会で否決された。

 公示前に行われた公開討論会で松下氏は「外国人参政権」について「市長の時に議論をしたことも提案をしたこともない」「いまは時期尚早で、どちらかといえば反対」と述べ、有権者の警戒感の払拭に努めた。

 実は武蔵野市の革新勢は、このところ、隙間風が吹いている。きっかけは2023(令和5)年12月に投開票が行われた武蔵野市長選だ。保守系候補の元自民党市議、小美濃安弘氏(62)を擁立し、革新系は元市議の笹岡裕子氏(37)を擁立した。この笹岡氏の擁立でひと悶着があったと、ある武蔵野市議は語る。

 「笹岡氏はもともとはれいわ新選組に近く、以前は市民の党と同じ会派に所属していたことがあります。ところが、立憲民主党系の市議が『自分が出たい』と言い出して、なかなか一本化できませんでした。そこで市長選は笹岡さんを擁立することで立憲民主党が折れ、その代わりに菅直人・元首相の長男、源太郎氏を市長選と同日に行われる市議補選に立憲民主党の候補者として擁立し、れいわや生活者ネットワークなどが支援することで折り合ったのです」

 ところが、パーティー券収入の不記載事件で東京地検特捜部の強制捜査を受け、圧倒的不利と言われた小美濃氏が339票差で当選してしまった。小美濃氏の第一声が「信じられない気持ちだ」だったくらいだ。革新系の衝撃の大きさは察するに余りある。

 もともとは松下氏が遮二無二、外国人が参加できる住民投票条例を通そうとしたからだ、という批判も飛び出し、今も松下氏には逆風が吹いているのではないか、とみられる。また松下氏が市長だったころに与党だった武蔵野市議と連携した極左団体の構成員が、武蔵野市内の米穀店の店主のX(旧ツイッター)への投稿が差別だ、と店にいわゆる「凸撃」する者まで現れ、これが相当な武蔵野市民の反発を買ったともいわれている。

 また松下氏が市長の時、JR吉祥寺駅前の民間不動産会社との土地交換を巡って訴訟を起こされ(1審は松下氏側の勝訴、控訴の方針)たりもした。

 中立派の市議からも「革新系の地元市議たちの動きが鈍い。これは相当接戦になると思う」という声が漏れている。

 ラディカルなイメージがすっかり定着してしまった松下氏。蓮舫氏を呼んだ同じ23日には辻元清美・参院議員を、25日も長妻昭・立憲民主党代表代行を呼んだ松下氏。なんだか余計に急伸左派であることを証明してしまっているような顔ぶれだ。

 一方の福田氏は若さを前面に出し、応援に駆け付けた国会議員は、石破茂首相を筆頭に、青山繁晴・参院議員、佐藤正久・参院議員、茂木敏充・元外相、小泉進次郎・元環境相、そして官僚時代に秘書官を務めた斎藤健・元経済産業相と多士済々だ。

 選対委員長を務める小泉氏は「福田さんは政治とカネは全く関係ありません!」と強調した。クリーンさをアピールできるのも強みだ。

 「日本に生まれてよかった。日本が大好き、と思ってもらえるような社会を作りたい。そう言ってもらえる社会を作ることに私、福田かおるの残りの人生を捧げます」と繰り返し訴え、外国人参政権には明確に反対した。

 革新が全国でも強い選挙区で知られる東京19区。27日の投開票日にはどちらが笑っているのだろうか。

 

松下玲子候補の応援演説をする蓮舫・元参院議員(中央)=23日、東京都武蔵野市のJR武蔵境駅前(大学生の息子が撮影)

 

 応援に駆け付けた茂木敏充・元外相(左)とともに拳を突き上げて「ガンバロー」とコールする福田かおる氏(中央)=21日、東京都小金井市のJR武蔵小金井駅(三枝玄太郎撮影)


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