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関税の時代 日本は新世界に対応できるか?
自由貿易の発祥はどこか?
それには諸説あるが、少なくとも近代においてはイギリスであるという主張に反対する人はいないだろう。
インドなどの植民地からの製品を自由にイギリスに輸入する事で貿易業者は大儲けした。大衆の生活レベルも上がり、砂糖を庶民でも入手できるようになった。高級品とされたあらゆる物の値段が下がり、庶民にも手が届く時代となった。一方で国内産業は荒廃し、街は失業者で溢れた。
この時代をグレートディプレッションと呼ぶ。
直訳すると『大不況』なのだが、日本語では『1873年恐慌』と呼んでいる。
英語では『Panic of 1873』と呼ばれている。
世界恐慌の70年前の話で、1930年の世界恐慌とは別モノだ。
イギリスでは、このパニックが「長期恐慌」として知られる20年にわたる停滞の始まりとなり、イギリスの経済的リーダーシップが弱体化していった出来事だった。
自由貿易とは、最終的に、その時代の最先進国の国内産業を食いつぶし破綻させる事を意味していた。世界で一番豊かな国に、世界中から安い商品を集めて売るのだから、当然そうなる。
そして、その世界最先進国が落ちぶれると、次に豊かな国がターゲットにされる。生産国も豊かになるので賃金が高くなっていく。そのため生産国も、もっと賃金の安い国に移動し、今までの生産国は見捨てられる。
これが自由貿易の結果である事は歴史が証明していた。
そして世界最先進国がイギリスからアメリカに代わり、アメリカが世界一豊かな国となり、アメリカが世界中から食い荒らされる番となった。
だからトランプは『アメリカは被害者だ』と言っているが、実際には、アメリカ企業自身が、それに加担しており、世界一の最先進国の宿命とも言える現象だった。
グローバリストとは、既にこの頃には存在し、自分の会社さえ儲かりさえすれば、特定の国が滅んでも構わないという考えを持っていた。ある世界一豊かな国が亡べば次に豊かな国に売ればいいだけで、それよりも自由に売れる事の方が重要だった。これは国を持たないユダヤ的思想であり、多くはユダヤ系の会社であった事も事実だ。
そして、この自由貿易は、世界を豊かにする貿易でもあった。
世界中がアメリカに自由に売れるのだから当然だ。
そして、自由貿易の原則に漏れず、アメリカは滅びるはずだった。
しかし、この原則に拒否反応示したのが、今回のトランプ関税だ。
これまでアメリカは自由貿易の先導者だった。なぜなら自らが自由貿易によりイギリスから世界一豊かな地位を奪い、基軸通貨も奪った国だからだ。
だからアメリカこそ自由貿易の推進役だった。
しかし、そのアメリカが自由貿易に終止符をうったのだ。
考えてみれば、関税自主権は、どの国にもある当然の権利であり、明治時代に不平等条約で、日本は関税自主権を失ったが、それを必死に取り戻した。
その関税自主権を行使する事は、本来、当然の権利であったはずなのだが、アメリカが行使すると、世界はトランプを横暴と批判した。まるでアメリカで販売する事が当然と思っているようだ。
そのような発想は自由貿易こそ世界に必要で、保護貿易は世界大戦をもたらすという考えから来ているのだろうが、トランプ関税は保護主義ではない。
なぜなら、アメリカで生産すれば関税はかからないとしているし、フォードやGMというアメリカの会社であってもカナダやメキシコで自動車を生産しアメリカに輸出した場合は、関税がかかるからだ。
全く自国の自動車産業を守っていない。
だから自国の産業を保護し、最終的に自国の競争力を失わせる保護主義ではない。トランプが守ろうとしているのは雇用であり、防ごうとしているのは貿易赤字だ。だから、ある程度の制限付き自由貿易に切り替えたに過ぎない。
ただし…
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