… … …(記事全文5,468文字)2025年9月11日、米保守系団体「ターニング・ポイントUSA」のエグゼクティブディレクターで、トランプ大統領誕生の立役者の一人とされる活動家チャーリー・カーク氏が、ユタ州の大学のイベント出演中に、約2000人の聴衆の面前で銃殺されるという悲劇的な出来事があった。3歳の娘と1歳の息子のパパで、エリカさんの夫あった彼は、まだ31歳。参政党に招かれて来日し、9月7日に講演したばかりだった。誰がどんな目的で殺したのか、まだはっきりと分かっていないが、言論を暴力で封殺することは絶対に許されない。それに、言動が気に入らなかったからといって、死を喜ぶなんてもっての他だ。まずは、カーク氏の冥福を心から祈りたい。
そして参政党に関しては、その2日前の9月9日に神谷宗幣代表らが記者会見を開き、元衆議院議員の豊田真由子氏を、政調会長補佐およびボードメンバーとして迎え入れるという大きなニュースがあった。この件について私が疑問を呈する投稿をXに上げたところ、多くの人から反応があり、神谷代表からも引用リプをいただいた。そこで今回は「新・医療亡国論」の連載を一時中断し、この問題についてあらためて私の見解を書かせていただくことにする。
この一報に触れて、私は神谷代表の決定に、大いに疑問を抱いた。秘書に対する暴言が、過去に問題となった人だからではない。豊田氏がコロナワクチンに対して批判するどころか、擁護するような発言を繰り返してきたからだ。一方、参政党はコロナワクチン批判で支持を集めた経緯があり、「mRNAワクチン中止」を公約の一つに掲げてきた。相反する思想を持つ人物を、なんの弁明もさせることなく、いきなり要職に抜擢したのだ。これは「反コロナワクチン」に共鳴して参政党を支持した人たちに対する裏切りではないのか。
豊田氏の発言で私がとくに憤りを感じたのが、関西ローカルの「よんチャンTV」(毎日放送)という番組が、2024年11月6日の特集で、元看護師・倉田麻比子(まひこ)さんたちのコロナワクチン被害を取り上げたときのことだった(MBS NEWS「【新型コロナワクチン後遺症】元看護師は車いす生活に「元の自分に戻りたい...」消防士「23㎏痩せ、心の病といわれた」『治らない』後遺症の現実【スクープ】【MBSニュース特集】2024年11月6日 https://www.youtube.com/watch?v=8RS_jiUqfI0
コロナワクチンに反対してきた人なら、まひこさんのことはご存じだろう。病院に勤めていたまひこさんは、23年1月、医療従事者として受けた5回目のワクチン接種の直後に高熱に襲われ、目が覚めたときには手足に力が入らなくなっていた。もともとはボルダリングを趣味にするなど健康で活発な女性だった。ところが現在も手足をうまく使うことができず、車いす生活を余儀なくされている。先月26日の「薬害根絶デー」でのリレートークでも、マイクを握ったまひこさんは厚生労働省に向かって、涙ながらに薬害を認めるよう訴えていた。
その、まひこさんたちの被害の実態や苦しみを伝えるVTRを見たのち、この番組のコメンテーターを務めていた豊田氏は、こんなふうに発言したのだ。ここに全文を書き起こす。
「私もたくさんご相談も受けるし、ほんとに友人なんですけど常に気持ちが悪いと。それが人生でほんとにどんだけしんどいことかわかるし、倉田さんも生活を取り戻したいって、ほんとに分かる。
ただ、厚労省も安全性に新たな懸念は認められないと言っていると思うんですけど、まったく問題がないと言ってるわけではないんですよ。当然一定の割合で副反応が生じてしまうということは分かっていて、だからこそ救済制度は設けてるんですけど。
ただ全体で見たときに、ワクチンを打つことでコロナで亡くなる方とか、コロナで重症化する方は防いでることも、やっぱりエビデンスとして事実なので、コロナ全体で、社会全体で見たときのリスクベネフィットを考えたら、一定の副反応が生じるんだけども、打つっていうこともあるという話なので、やっぱりそれは個々の方がご自身のリスク、高齢者であるとか持病があるとかご判断で打っていただくということで、なんというのかな、善悪とか白黒という話ではないということで、厚労省もそこはほんとはわかっているうえで、言ってるんだと思うんです。
話題なのはほんとにそうなので、想像するだにつらいじゃないですか。だから我々はコロナの後遺症の話もするし、ワクチンの後遺症の話もするので、ほんとに私たち社会が職場のみなさんとか家庭のみなさんも含めて、支え合う、理解するということが大事だと思います」
まず、このコメントに、反論しておきたい。第一に豊田氏は「厚労省はまったく問題がないと言ってるわけではない」と語っているが、予防接種救済制度ですでに9000を超える件数を認定しておきながら、コロナワクチンを評価する審議会では、委員たちに「重大な懸念はない」と言わせ続けている。もちろんコロナワクチンの「薬害」も公式に認めていない。この豊田氏のコメントは、厚労省があたかもコロナワクチンの被害を認めているかのような誤解を視聴者に生じさせる。
第二に、コロナワクチンが死亡や重症化を防いでいるのは「エビデンスとして事実」と語っているが、接種開始後のほうがコロナの陽性者も死亡者も増えたという事実がある。つまり、論文で感染予防効果や重症化予防効果が報告されてはいても、現実としては疑わしいのだ。しかし、この豊田氏の発言を聞いた視聴者は、「やっぱりコロナワクチンには効果がある」と誤解しただろう。さらに言えば、「コロナ」の死亡を防ぐ効果があったとしても、害が上回れば総死亡率が上がり、亡くなる人は逆に増える。接種後に超過死亡が増えたことからも、コロナワクチンが死者を増やした可能性は否定できない。その点においても、豊田氏の発言はやはりミスリーディングと言わざるを得ない。
第三に、豊田氏はコロナ全体、社会全体でリスクベネフィットを考えれば、一定の副反応があっても、打つことがあると語っている。つまり豊田氏は、メリットが上回るならば、まひこさんたちのような犠牲者が出ても、仕方がないと言っているのも同然なのだ。テレビでこれを聞いたまひこさんたちコロナワクチンの被害者は、どう思っただろうか──。だが、健康な人に接種するものであるかぎり、ワクチンの健康被害は極力ゼロにしなくてはならない。実際、コロナ以前のワクチンは、数人でも死者や命に関わる有害事象が報告されたら、いったん接種を立ち止まって安全性を再確認していた。しかし、コロナワクチンは副反応疑いだけで2000人を超える死者が報告されているにもかかわらず、政府厚労省は「重大な懸念は認められない」と強弁し、接種を続けている。こうした安全性軽視の姿勢を、豊田氏は事実上許容しているわけだ。
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