… … …(記事全文5,751文字)X(旧ツイッター)で豊田真由子氏の問題に言及してから、参政党党員や支持者と議論を交わすことが増えた。「勉強不足だ」「もっと調べろ」などと失礼なレスをしてくる人もいたが、多くは有意義な議論だった。お互いに考えが違っても、相手をリスペクトして、礼節を保ちながら交流するのは、私としてもウェルカムだ。そこで今回も「新・医療亡国論」の連載を一時お休みして、参政党の問題について書かせていただくことにする。
参政党の人たちと議論して感じるのは、「もう時間がない」という焦りだ。「邪悪なグローバル勢力に支配されて、日本人がより弱体化される」「外国人がどんどん移住してきて、日本も欧米のように治安の悪い国なってしまう」「早く自主独立して自前の防衛力を増強しなければ、外国に国土を奪われる」。こんな危機感を持っていると感じた。チャーリー・カーク氏が残した「日本はまだ間に合う」という言葉に参政党の人たちが共鳴したのも、こうした焦りを共有しているからだろう。
そう思って、あらためて参政党の「新日本国憲法案」(以下、創憲案)を読み返すと、その条項のなかに上記のような危機感が色濃く反映されていることに気づいた。なるほど、この憲法案は君民一体の復古主義的な国づくりを理想とするだけでなく、外国の侵略から日本人と国土を守りたいという願いの詰まったものだったのだ。この危機感ととくに関連する条項を、一部抜き出してみる(なお、創憲案の注記に対応する番号の部分は省略した)。
(国民)
第五条 国民の要件は、父または母が日本人であり、日本語を母国語とし、日本を大切にする心を有することを基準として、法律で定める。
2 国民は、子孫のために日本をまもる義務を負う。
(地方自治)
第十四条
3 国は、地方自治に対し、外国または国際機関からの干渉を受けないよう措置を講ずる。
(外国人と外国資本)
第十九条
外国人の入国及び在留条件は、国が主権に基づき、自由に決定することができる。
2 土地は公共の財産であり、外国人または外国資本に譲渡してはならない。
3 外国人または外国資本の保有する不動産、法人及び重要な資産に係る権限は、情報が公開され、法律で定める手続により没収し、または正当な補償のもと、国が買い戻すことができる。
4 外国人の参政権は、これを認めない。帰化した者は、三世代を経ない限り、公務に就くことができない。帰化の条件は、国柄の理解及び公共の安全を基準に、法律で定める。
(領土等の保全)
第二十一条
国は、領土、領海、領空その他主権の及ぶ領域を保全する。
2 外国の軍隊は、国内に常駐させてはならない。
3 外国の軍隊の基地、軍事及び警察施設は、国内に設置してはならない。
これを読んで、みなさんはどう思っただろう。参政党の人たちは、「日本人なら当然だ」と言うかもしれない。だが、私は、申し訳ないけれど、願望ばかりが並べられ、矛盾も多く、実効性に乏しい理想論だと感じた。それだけでなく、参政党が国会でさらに勢力を伸ばして、この創憲案に沿った主張を実践に移したとして、本当に国民や国土を守ることができるのかと疑問に思った。むしろ、諸外国との揉め事が増えて、紛争に巻き込まれていくだけではないか。
一つ一つ見ていこう。まず(国民)(政治参加)(地方自治)の条項から読み取れるのは、第十四条にあるように、「外国または国際機関からの干渉」を許さないという強い意思だ。近年、欧米では永住外国人に地方自治への参加を認める動きが広がり、日本でも参政権を付与すべきという主張が出ている。これに対して、外国の影響を受けると反発する動きは以前からあったが、参政党の創憲案はさらに一歩も二歩も踏み込んでいる。第十九条4項に「外国人の参政権は、これを認めない。帰化した者は、三世代を経ない限り、公務に就くことができない」とある。つまり、日本を心から愛して、日本に尽くそうと決意し、日本人になったとしても、元外国人である限り、公務員にも政治家にもなれないのだ。
それだけでなく、第五条は「父または母が日本人」であることを国民の要件としている。つまり、両親のどちらかに日本人の血が流れていないと、国民とはみなされず参政権が与えられないのだ。では、祖父祖母が両方とも帰化人であった場合には、どうなるのだろう。その子がまた外国人と結婚したら、孫にはにネイティブ日本人の血は流れていないことになる。見た目がアジア人と違っても、孫を日本人と認めて参政権をくれるのだろうか。「三世代前に帰化したのだから大丈夫」というかもしれない。だが、家庭環境によっては一般の日本人とは異なる習慣や文化、考え方を持っていることだってあり得る。だとしたら、国民となるのに三世代を必要とする合理性が、どこにあるのだろうか。これでは国内だけでなく海外からも「出自による差別」と非難する声が上がる可能性がある。つまり、皮肉なことに外国からの干渉を排除しようとする条項が、かえって外国からの干渉を招く火種になりかねないのだ。

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