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鳥集徹(ジャーナリスト)

鳥集徹

#101 国政政党として真価を問われるのはこれからだ ~大躍進した「参政党」のサポーターに望むこと~

前回に引き続き、連載「新・医療亡国論」をお休みして、参院選ついて書かせていただくことをお許し願いたい。

 

2025年7月20日、参議院議員選挙が行われた。自公が大幅に議席を減らして過半数を割る一方、参政党が14人を当選させて、改選前の1議席から15議席へと大躍進した。まずは、参政党に未来を託して選挙戦を闘ったサポーターの方々に「おめでとうございます」と伝えたい。以前、大物候補者が相次いで党を去るなどのトラブルがありながら、2020年4月の結党からわずか5年で、単独で法案を提出できる国政政党にまで成長したのは、神谷宗幣代表のカリスマ性はもちろんのこと、サポーターの方々の精力的な活動の賜物だろう。

 

その反面、今、参政党はマスコミからの様々な批判に晒されている。それを「マスゴミ」の偏向報道による不当な「攻撃」だと捉えているサポーターも多いだろう。だが、それは無視できない勢力となった政党が必ず通る「洗礼」と捉えるべきだ。参政党の勢いに恐れをなしたマスコミや反対勢力が、神谷代表や参政党議員の言動の矛盾、不正の疑惑などを突いてくるのは、当たり前のことだ。既成政党もそうした批判を糧にして、その基盤を強くしていった。

 

逆に、批判を振り払えなかったり、支持者を裏切る公約違反が相次いだりすれば、3年で崩壊した民主党政権(2009年9月~2012年11月)の二の舞になるだろう。熱狂の渦の中で歴史的な政権交代を成し遂げた民主党は、急に権力を握って浮かれた議員たちの傲慢さが鼻につき、国民の反感を買った。さらには「霞が関の埋蔵金発掘」や「普天間米軍基地移設」といったマニフェストが空手形に終わって、急速に国民の支持を失っていった。

 

落ち目になれば反逆者や離反者が出るのも世の常だ。政権を下野した後の民主党はご存じの通り、「立憲民主党」と「国民民主党」の二つに割れた。「反自民」を旗印にしていたにもかかわらず、あきれることに自民党に寝返った議員すらいる。裏切り上等の権謀術数が渦巻く世界。それが政治だ。だからこそ、参政党サポーターの方々は、選挙で勝ったと浮かれずに、兜の緒を締めるよう執行部に強く求めるべきだろう。

 

参政党が国政政党として永続できるかどうかは、まさに今後の国会での働きぶりにかかっている。そのためにも、サポーターこそが参政党に厳しい目を向けて、あるべき姿を問い続ける必要がある。支持者でもない私が言うのは「余計なお世話」だと言われるだろうが、コロナワクチンに抵抗した同志として、あえてサポーターの方々に望むことを書かせていただきたい。

 

1.「創憲案」と「日本国憲法」を読み比べて熟読・吟味する

私は選挙後の記者会見で、参政党の「新日本憲法案(以下、創憲案)」を候補者が読んでいるのかどうか質問された神谷代表が、「ちゃんと読んでないんじゃないですかね」と答えたのを聞いて、大変驚いた。神谷代表は「政策カタログは指導しましたけども、憲法案に関してはあくまで議論の叩き台ということで言いましたので」と説明していた。だが、創憲案は党の思想の根幹を成すものであり、それがあるからこその政策であるはずだ。

 

現に神谷代表は「コロナ対策法」と「スパイ防止法」を提出したいと話している。「コロナ対策法」は、パンデミック対策やコロナワクチンの見直しなどを軸とするもので、創憲案の第三章「国民の生活」第十一条(健康と医療)の2項「国民は、必要な医療を選択する自由を有し、その選択を持って差別されない」などに基づくと考えられる。私はこの創憲案の考えには賛同する。そしてコロナ対策法が提出された暁には、きちんと創憲案の理念に則ったものになっているかどうかを、しっかり吟味するつもりだ。

 

もう一つのスパイ防止法も、創憲案の第四章「国まもり」第十六条(情報及び防諜)の4項「国は、外国による防諜活動を防ぐ機関を設置し、必要な措置を講じる」に基づくと考えられる。日本は外国のスパイ活動を防止する法律がないために「スパイ天国」になっていると指摘されてきた。確かに国防を考えれば、外国のスパイ活動に歯止めをかけることは必要かもしれない。だが一方で、40年前(1995年)に提出されたスパイ防止法に対して、日本弁護士会が「人権侵害の危険が極めて大きい」と反対し、結局、廃案になった経緯がある(日本弁護士連合会「『国家機密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案』に反対する決議」昭和60年10月19日 https://www.nichibenren.or.jp/document/civil_liberties/year/1985/1985_2.html)。

 

前回も触れた通り、創憲案には現行の日本国憲法に明記されている「国民主権」「基本的人権の尊重」「思想信条の自由」「表現の自由」などの条項がすっぽり抜け落ちている。すでに憲法学者をはじめとする多くの人がその危険性を指摘しているが、参政党がスパイ防止法を提出すれば「国民の権利と自由を侵すものであり、国家権力による恣意的な運用を許すことになる」などと護憲派から猛反発を受けるのは目に見えている。こうした条項が明記されていないのだから、権利や自由が侵される危険性があると心配されるのは当然のことだ。

 

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