… … …(記事全文5,446文字)介護する両親とともに、新型コロナウイルスに感染
「私が倒れたらもう、両親は誰が面倒を見るんだろうって」
新型コロナで亡くなった方は 年間 約3万5千人
新型コロナはまだ終わっていません。
自分を守ることが、家族を守ることにも
新型コロナにも早期の診断・治療を
これは、「塩野義製薬」をはじめとする「SHIONOGIグループ」のX(旧ツイッター)のアカウントから流れてきた動画のナレーションを書き起こしたものだ。投稿日は2025年6月25日。動画にはインフルエンザの年間死亡者数が2855人なのに対し、新型コロナの年間死亡者数が3万5865人と圧倒的に多いことを示すグラフも表示されている(2024年 厚生労働省人口動態統計の概況・死因簡単分類別・死亡率より)。
そして、その動画を開くと、下に「01感染時の治療法」「02感染時の症状」「03重症化と後遺症」「04感染波の予測」「05感染の予防」という項目が出てくる。そこに、どんなことが書かれているのか。たとえば「01 感染時の治療法」を開くと、「新型コロナウイルス感染症は、症状や基礎疾患などによって一人ひとりに適した治療が異なります」という見出しとともに、「現在では治療法の選択肢が広がり、インフルエンザと同様に、ウイルス自体を直接やっつける治療(抗ウイルス薬)なども選択できるようになりました」などと記載されている。
また、「05 感染の予防」を開くと、「新型コロナウイルス感染症は『5類感染症』へと移行となり、現在は一律の対応を求められていません。感染対策の実施は個人や事業者の判断に委ねられています」としつつも、「マスクの着用や手洗いなどの感染予防について対策を心がけましょう」と解説され、さらに具体的対策として「手洗い」「換気」「マスク着用」「密閉、密集、密接の回避」とともに、ちゃっかり「ワクチン接種」もあげられている(それにしても、久しぶりに「三密」のことを目にした)。
なにも知らない人が見れば、新型コロナの治療や予防について、親切に教えてくれるサイトだと思うかもしれない。だが、製薬会社はまったくの「善意」で、このような情報提供をしているわけではない。ご存じの通り塩野義製薬は「ゾコーバ」という新型コロナの治療薬を販売している。また、定期接種では使われなかったが、同社は2024年5月に新型コロナの組み換えタンパクワクチン「コブゴーズ筋注」の承認も受けている。新型コロナの予防と治療を純粋に善意だけで啓発しているのではないことは明らかだろう。はっきり言えば、ゾコーバが売れ続けるためにも、同社にとって新型コロナは「終わってもらっては困る」ものなのだ。
ちなみに、この疾患啓発サイトの最後に監修として登場しているのが、愛知医科大学臨床感染症学講座・教授の三鴨廣繁氏だ。コロナ騒ぎの渦中、しばしばテレビのコメンテーターとして出演していたので、氏の名前を見て顔を思い出せる読者もいるのではないだろうか。特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」が運営する「製薬マネーデータべース」で検索すると、三鴨氏は2022年だけで製薬会社19社から、合計で1695万4941円もの大金を受け取っていた(うち講師謝金89件1257万7717円、コンサルティング等業務委託費19件264万8982万円、原稿執筆料・監修料13件172万8242万円。なお、同データベースでは「廣」ではなく、「三鴨広繁」の漢字でヒットした。もし別人ならば訂正するので、教えていただきたい)。
三鴨氏の受け取り額を支払い企業別に見ると、トップはMSD(18件)で約295万円、2位がグラクソ・スミスクライン(20件)で約268万円、3位がファイザー(11件)で約146万円となっている。MSDとグラクソは「HPV(子宮頸がん)ワクチン」、ファイザーは「コロナワクチン」の販売元だ。そして、三鴨氏は塩野義製薬(6件)からも約93万円受け取っている。SHONOGIの情報提供は、製薬企業と浅からぬ利害関係のある人物によって監修されていることも、我々は認識する必要がある。そして、このような人物がメディアで新型コロナやワクチンについてコメントしていたのである。
本題に戻ろう。塩野義製薬は本心では「ゾコーバ」の名前をダイレクトに消費者に売り込みたいのではないか。「新型コロナの早期診断を。発症72時間(3日)以内なら、ゾコーバが効果的です」といった具合に宣伝したほうが、ゾコーバをもらうために医療機関を受診する患者が増える可能性が高いからだ。だが、それは許されない。なぜなら医師の処方を必要とする「医療用医薬品」の製品名称を消費者へ直接広告することは、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)で規制されているからだ。
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