… … …(記事全文5,057文字)昨年の大晦日(2024年12月31日)、新刊『レプリコン騒動 誰も書けない真実「反ワクチン」運動の功罪』(宝島者新書)の校正済み初校ゲラを担当編集者に手渡しするために、上野に出かけた。西郷さんの像の下あたりある、さくらテラスのタリーズコーヒーで編集者と落ち合い、少し打ち合わせもして、2024年の仕事はすべて完了。ほっとした気分で、上野のアメ横界隈を少しぶらついて帰った。
アメ横といえば、年の瀬の大売り出しのときに、叩き売りの店員さんのダミ声が飛び交うことで有名な場所だ。相変わらず多くの人が押し寄せて、とくに目立ったのがアジアからと思しき観光客の姿だった。インフルエンザが流行しているが、そんなことはお構いなし。密、密、密。マスクをしている観光客などほとんどなかった。寒空の下、昼飲みを楽しむ欧米人たちの姿もあった。
この賑わいの中で、わたしはどうしても考えてしまうのだ。「レプリコンワクチンは3発目の原爆」「ワクチンパンデミックが起こり、人々が大量に死んで、日本が封鎖される」。そんなふうに、煽っていた人たちがいたはずだ。定期接種が始まって、すでに2カ月が経った。だが、そのような兆候はまったく見られない。「予測」は外れたのではないか。それに煽られて起こった騒ぎのために、「反ワクチン」がマスコミの餌食になり、原口一博議員が提訴された。恐怖と不安の発信源となってきた人たちは、その責任を取るべきだ。
原口議員訴訟を公表した会見で、Meiji Seikaファルマの小林大吉郎社長はレプリコンワクチン「コスタイベ」について、「105億円を見込んだ売り上げが3億7000万円に落ち込んだ」と明かした。厚労省の資料によると、定期接種におけるメーカーの希望小売価格は1万1600円と見積もられている。3億7000万円を1万1600円で割ると、コスタイベはおよそ3万2000人分売れたことになる。(*注:当初、1万1600円を1バイアルあたりの価格と勘違いしていましたが、1人あたりの価格でしたので、「3万2000人分売れたことになる」と訂正しました。読者に深くお詫び申し上げます)
当初見込まれた427万という供給量からすると100分の1にも満たないが、それでもレプリコンワクチンを接種した人が、全国に数万人はいると考えられるのだ。にもかかわらず、今のところワクチンパンデミックらしき兆候は見えない。誤解のないように言っておくが、わたしはレプリコン含むすべてのコロナワクチンに反対だ。だが、恐怖の煽り過ぎを諫めてきた我々は、「リスク矮小化勢力」だの「火消し隊」だのと、X(旧ツイッター)で罵られてきた。それくらいわたしたちを激しく責めたのだから、予測通りにならなかったことを、きちんと弁明してほしい。
恐怖と不安を煽った側の人たちは、きっとこう反論するだろう。「万が一のことを想定して警鐘を鳴らしたのだ。何事も起こらなかったのだから、よかったではないか」「コロナワクチンを打つ人が減ったのは、レプリコンの危険性を伝えたおかげだ」「実はレプリコンの被害は起こっているが、顕在化していないだけだ」「レプリコンのmRNAが変異して、こらからワクチンパンデミックが起こる危険性もある」等々。
確かに、そうした「可能性」は「ゼロ」ではない。だが、そのような理論上考えられる可能性を持ち出し続ければ、どんな言い訳でもできる。ワクチンパンデミックの兆候は見えないという厳粛な事実を前に、「可能性」に「可能性」を重ねて弁明を繰り返したところで、科学的に説得力があるだろうか。科学者ならば、提唱した可能性が現実に起こることを、実験、試験、調査等によって証明する努力をするべきだ。そのような事実に基づかない、可能性ばかりに立脚した言説を繰り返したからこそ、Meiji Seikaファルマから逆襲を受けたのではないか。
コロナワクチン推進派とレプリコン反対派は、まったく対極の立場にある。だがわたしには、その両派が合わせ鏡のように、瓜二つに見えるのだ。振り返ってみてほしい。あの「8割おじさん」と呼ばれた理論疫学者の西浦博氏(京都大学大学院医学系研究科社会健康医学系専攻教授)が、「人と人との接触を8割減らさないと、日本で約42万人が新型コロナで死亡する」と「予測」したことを。
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