… … …(記事全文5,139文字)2024年12月27日、Meiji Seikaファルマの小林大吉郎代表取締役社長と弁護士3人が記者会見を開き、立憲民主党の原口一博衆議院議員がX(旧ツイッター)や動画などで同社のレプリコンワクチン「コスタイベ」をめぐり誹謗中傷を繰り返しているとして、名誉棄損で東京地裁に提訴したと発表した。同社がとくに問題視しているのは、次の3点だ(ミクスOnline「Meiji Seika ファルマ 原口一博議員を提訴『731部隊』、コスタイベを『生物兵器』と繰り返し誹謗中傷」2024年12月25日)
1.Meiji Seikaファルマを「731部隊」にたとえたこと
2.コスタイベのことを「3発目の原爆」や「生物兵器」などとなぞらえたこと
3.コスタイベの臨床試験を「殺人に近い行為」と繰り返し表現・発言していること
731部隊とは、第二次世界大戦中に大日本帝国陸軍に存在した「関東軍給水防疫部」の通称で、指揮官であった石井四郎をはじめとする軍医・研究者たちが捕虜を使って人体実験を行い、生物兵器の実験的使用も行ったとされる。敗戦後、彼らはアメリカに研究資料を提供する見返りとして、戦争責任を免れた。そして、同部隊に所属していた医師たちの中には国立感染症研究所の歴代所長を務めた者や、薬害エイズ事件を引き起こした非加熱血液製剤の製造元ミドリ十字社の設立に関与した者もいた。
原口氏は、このようないわくつきの歴史を持っている731部隊に、Meiji Seikaファルマをなぞらえたわけだ。小林社長は「社会的に新型コロナワクチンに対していろいろな考え方があることは理解できる」とする一方で、原口議員の発言に対して、会見で何度も何度も「意見や論評を超えた誹謗中傷だ」と強調していた。原口氏の裁判でレプリコンワクチンの安全性が問われると期待している向きもあるが、そのような医学論争にはならず、「表現が名誉棄損に当たるかどうかが争点となる」ことを、我々は理解する必要がある。
そして、原口氏が誹謗中傷したために、同社やコスタイベを接種する医療機関に抗議の電話が多数かかるなどして販売が妨害されてしまい、当初105億円を見込んでいたレプリコンの売り上げが、わずか3億7000万円になってしまった。このうち55億円の利益が原口氏の名誉棄損によって失われたとM同社は主張している。つまり、「コスタイベが売れなかったのは、原口氏の誹謗中傷や反ワクチンのせいだ」としているわけだ。その損害の一部にあたる1000万円の賠償を原口氏に求めるというのが、今回の訴訟におけるMeiji側の筋立てだ。
ほんとうはコスタイベが売れないのは、「1バイアル16人分を6時間以内に使い切らなければ廃棄」という使い勝手の悪さが一番の理由だろう。さらに、コロナワクチンが原則有料となったことや、国民のコロナワクチンの接種意欲が大きく落ちたことも大きい。だが、Meiji Seikaファルマは株主たちの目から自分たちの販売戦略の「失敗」を逸らせるとともに、売り上げ低迷を反ワクチン運動のせいにすることで、損害の責任を原口氏に押し付けて、訴訟を有利に運ぼうとしているわけだ。
X(旧ツイッター)ではコロナワクチンに反対する人たちのあいだで、Meiji Seikaファルマを非難し、原口氏を応援すると意気込む投稿が多く見られた。これから原口氏を支援する組織ができるかもしれない。わたしは、そのこと自体を批判するつもりはない。だが、原口氏を応援する人たちに言いたいのは、「相手に揚げ足を取られないためには、どこまでなら法的に許されるのか。そして社会に理解と共感を広げるにはどのような言論活動をすべきなのか」を、この裁判を通じてぜひとも学んでほしいということだ。
そして、原口氏の裁判のことばかりに夢中になって、コロナワクチンの薬害被害者を置いてきぼりにしないでほしい。コロナワクチンに反対する勢力が、Meiji Seikaファルマと原口氏との法廷闘争ばかりに目を向けることで笑うのは誰か。それは、コロナワクチンの薬害の責任を負うべき政治家、政府・厚労省、医学医療界、そしてファイザー社やモデルナ社だ。レプリコン騒動が勃発して以来、こうした本丸に対しての責任追及が、まったく疎かになってきた。そのことを看過できず、わたしは新刊の『レプリコン騒動 誰も書けない真実「反ワクチン」運動の功罪』(宝島社新書)を書いた。mRNA中止を求める国民連合(以下、国民連合)に参加した人たちにも、ぜひとも読んでいただきたいと願っている。
それにしてもなぜ、原口氏の発言が過激になってしまったのか。わたしは、彼を取り巻いてアドバイザーになった人たちの責任も大きいと考えている。
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