… … …(記事全文5,639文字)2024年12月2月、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する米下院特別小委員会」(以下「特別小委員会」)が、新型コロナウイルスは中国の武漢ウイルス研究所から流出した可能性が高いなどとする最終報告書を公表した。これを作成するために、特別小委員会は、22年2月からおよそ2年近くにわたって、100通以上の調査書簡を送付し、30件以上のインタビューと証言の採録、25回の公聴会と会議を開催し、100万ページ以上の文書をレビューしたという。そして、520ページに及ぶ報告書をまとめた。
まず言いたいのが、この報告書のことを知って、米国の底力を感じ、うらやましく思ったことだ。日本の議会でこれほどの労力をかけて、新型コロナ対策を検証し、真相を究明することができるだろうか。米国でファウチ氏らを追及する公聴会の様子も動画で見たが、真相に迫ろうとする議員たちの質問の的確さ、深さ、鋭さに脱帽した。相当量の資料を読み込み、勉強をして臨んでいることが分かる。これだけの能力を持つ議員が、果たして日本にいるだろうか。
嘆いてばかりいても始まらないので、この報告書に何が書かれているのか、まず要点をまとめてみたい。といっても、500ページもある英文の書類を読みこなす能力は、わたしにはない。その代わり、「監視と説明責任に関する下院委員会(United States House Committee on Oversight and Accountability)」のホームページに報告書のプレスリリースが掲載され、その概要が記されているので、研究所流出説に関する部分を、ブラウザの力を借りて翻訳・引用する(解釈の間違いや誤訳があれば指摘してほしい)。
*****以下、翻訳・引用*****
Covid-19は、中国の研究所から発生した可能性が最も高い。それを支持する5つの証拠は次の通り。
1.このウイルスが自然界では見られない生物学的特性を持っている。
2.すべてのCOVID-19症例が、1回のヒトへの持ち込みに起因している。これは複数の感染経路があった過去のパンデミックと対照的である。
3. 武漢には中国有数のSARS研究所があり、バイオセーフティーレベルが不十分な状態で機能獲得研究を行ってきた歴史がある。
4.武漢ウイルス研究所(WIV)の研究者は、COVID-19が生鮮市場で発見される数か月前の2019年秋にはCOVID様ウイルスに感染していた。
5.科学のほぼすべての尺度からすれば、自然起源の証拠があれば、すでに表面化していたはずである。
近位起源の論文:公衆衛生当局やメディアは、実験室からの流出説の信用を落とすために「SARS-CoV-2の近位起源」という論文を繰り返し使用してきたが、これはファウチ博士が、COVID-19が自然界に起源を持つという好ましい物語を推し進めるために広められたものである(*注「SARS-CoV-2の近位起源」という出版物=「ネイチャー・メディスン」に掲載された、新型コロナの自然発生説を支持する「The proximal origin of SARS-CoV-2」という論文のこと)。
機能獲得研究:機能獲得研究が行われていた研究室に関係する事故が、COVID-19の起源である可能性が最も高い。この危険な機能獲得研究を監督するための現在の政府のメカニズムは、不完全で、非常に複雑で、グローバルな適格性を欠いている。
エコヘルスアライアンス(エコヘルス):エコヘルスは、ピーター・ダザック博士のリーダーシップの下、中国の武漢で危険な機能獲得研究を促進するために米国の納税者の血税を使用した。特別小委員会が、エコヘルスが国立衛生研究所(NIH)の助成金の条件に違反している証拠を公開した後、米国保健社会福祉省(HHS)は公式の禁止手続きを開始し、エコヘルスへのすべての資金提供を停止した。
また、司法省(DOJ)がパンデミック時代のエコヘルスの活動について調査を開始したことも、新たな証拠として示されている。
NIHの失敗:NIHによる潜在的に危険な研究への資金提供と監督の手続きは不十分で信頼性が低く、公衆衛生と国家安全保障の両方に深刻な脅威をもたらしている。さらに、NIHは、デビッド・モレンス博士や「FOIAレディ」マージ・ムーアの行動に見られるように、連邦記録管理法の回避を促進する環境を助長した。
*****以上、翻訳・引用終わり*****
これを読めば分かる通り、武漢ウイルス研究所でコロナウイルスの機能獲得研究が行われており、それが同研究所の研究員たちに感染して流出したというのが、特別小委員会の調査による結論だ。そしてその研究は、NIHからの助成金を元に行われており、その資金はSARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)、エボラウイルスなどの新興感染症からヒト、動物、環境を守るという使命を掲げる非営利組織「エコヘルスアライアンス」を通じて提供されていた。
この研究所流出説の信用を落とすために、国立アレルギー・感染症研究所 (NIAID)所長(当時)で、米国のコロナ対策を指揮してきたアンソニー・ファウチ氏が利用したのが、新型コロナの自然発生説を支持するネイチャーの論文だった。さらに、ファウチ氏の顧問だったNIHのモレンス氏は、新型コロナのパンデミックに関する情報公開を避けるために公のメールアドレスではなく、個人のメールアドレスを使用し、新型コロナの起源に関する無数のメールを削除していた。また、NIHのFOIA(情報公開法)オフィスの主任だったムーア氏が、情報公開を避けるための方法をモレンス氏に助言していたことも発覚した。
これが、特別小委員会の調査で明らかになった、「武漢人工ウイルス流出説」についてのあらましだ。このように米国では、武漢から人工ウイルスが流出したことをもみ消すために、ファウチ氏の周辺で組織ぐるみの隠蔽工作が行われていたのだ。今回の調査結果のような話は以前から我々にも伝わってきていたが、陰謀論的な扱い方をされることが多かった。だが、もはや「説」でも「陰謀論」でもでもなく「ウォーターゲート」並みの大事件、すなわち武漢人工ウイルス流出「事件」として扱わねばならないだろう。
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