Foomii(フーミー)

X(ツイッター)では言えない本音

鳥集徹(ジャーナリスト)

鳥集徹

#68 【ワクチン後遺症患者】を食いものにするな ~薬機法違反のビジネスを憂う~

「とうとう逮捕者が出たか」というのが、正直な感想だ。2024年12月4日、松本市にある健康食品販売会社の役員の女性(47)と従業員の男性(52)2人が、「医薬品医療機器等法違反」の疑いで警察に逮捕されたというニュースが流れた(NHK信濃NEWSWEB「“解毒作用あり”とうたって販売か 松本の会社役員ら2人逮捕」2024年12月4日)。

 

2人は、厚生労働省から医薬品としての承認を受けていないにも関わらず、今年3月から9月にかけて、「新型コロナワクチンへの解毒作用がある」「発毛の効果がある」などと言って、長野県内に住む3人に水やお茶、ゼリーを販売していた。今年に入って「商品を服用した人が体調不良を起こしている」という情報が寄せられ、警察が捜査を進めた結果、逮捕に至ったという。

 

女性らは店頭やホームページで、1点あたり2000円から1万5000円で商品を販売しており、3人への売り上げだけでおよそ18万円に上っていた。この会社で「医薬品としての承認のない商品を購入した人は県内外で合わせて数百人に上るとみられ、警察は余罪についても捜査中だ」とNHKは報じている。

 

NHKのニュースでは、逮捕された2人の実名と会社名も報じられていた。ここでは敢えて書かないが、役員の女性の名前で検索すると、店舗のホームページと店舗および個人のFacebookがヒットした。ホームページには「国際中医師/登録販売者」というキャプションとともに彼女の写真が掲載されているのだが、どこにでもいる質素で優しそうな女性だった。Facebookには息子さんらしい少年が、あるスポーツで活躍する様子を撮った写真や動画もたくさんアップされていた。とても悪人だとは思えず、ご家族の気持ちを思うと心が痛んだ。

 

だが、罪は罪だ。国から医薬品として認められていない商品を「○○に効果がある」などとうたって販売すれば、薬機法違反に問われる。それを分かって販売していたとしたら悪質だが、知らなかったとしても健康食品やサプリメントを販売する会社として失格だと言わざるを得ない。会社のホームページやFacebookを見ると設立は2014年で、「漢方相談」や、妊活や産後の肥立ちによいとされる「よもぎ蒸し」を主力とし、「薬膳茶」「和漢サプリ」「電磁波対策グッズ」なども販売していた。

 

そして、女性のブログが掲載されており、「コロナワクチン後遺症を理解してもらえない」「新型コロナワクチン後遺症でお悩みの方へ」といったタイトルの記事がアップされていた。それを見ると「重症化しやすい方のためにとワクチンを受けるんでしょ? の圧力に屈してワクチン接種しました」「接種10日後からワクチン打った腕の振るえが始まりました」「病院に行けば、ストレスのせいと片づけられ」「パーキンソン病でもないのにその薬を処方される」といった事例が紹介されていた。その内容は、ワクチン後遺症を取材してきたわたしとしても共感できるものだった。

 

ただ、一方で、ブログの最後に「よもぎ蒸し」や「和漢茶」などの購入へ誘導するリンクが貼られていた。「体調不良を治すためなら、どんなことも試してみたい」と思うワクチン後遺症の患者や家族がブログを見たら、リンクをクリックして商品を買ってしまうかもしれない。女性からすると、本心から「コロナワクチン後遺症の患者を救いたい」と思ってのことだったのかもしれないが、やはりビジネス目的だったと見られても致し方ないだろう。

 

このニュースを見て、他人事と思えなかった人もいたのではないだろうか。X(旧ツイッター)では、コロナワクチンやシェディングの「解毒」を熱心に勧める人たちが多かったからだ。松葉茶、フルボ酸、ラベンダー精油、濃縮シリカ等々、あげればきりがないほど「解毒にいい」とされる健康食品やサプリメントを勧める投稿が多数見られた。その中には、もしかすると健康食品やサプリメントの販売会社の関係者がいたかもしれない。

 

現実に、コロナワクチンに反対するグループの中に、健康食品やサプリメントのマルチビジネスや、民間療法セミナーに誘導しようとする人が潜り込んでいることは、以前、このウェブマガジンでも紹介した(「#55反ワク活動に【解毒ビジネス】が入り込んでいる ~レプリコン伝播の不安につけ込む商売に要注意~」2024年9月8日)。また、「がんに効く」とされるヨウ素水を販売する会社が主催する講演会に、中部有志医師の会の代表が登壇していた問題もあった。

 

わたし自身も各地の講演会などに呼ばれた際に、健康食品やサプリメントを販売する関係者と名刺交換をしたことが何度かあった。もちろんその人たちがみな、薬機法に違反するようなビジネスをしているわけではないだろう。ただ、コロナワクチンやシェディングの「解毒」がビジネスチャンスになり得ることも確かだ。純粋にコロナワクチンに反対してではなく、ビジネスチャンスと捉えて、こうした会合に参画している人もいたかもしれない。

 

そうした中からまた、今回の事件のように摘発される人が出れば、「やっぱり反ワクチンはビジネス目的だった」と十把一絡げで非難される可能性がある。だからこそわたしは、コロナワクチン反対や薬害救済活動に携わる人たちは、こうした業者と一線を画すべきだと強く主張したい。なにより、ワクチン後遺症で苦しんでいる人たちは、仕事ができなくなり経済的に追い詰められている人が多い。そのような苦境にある人の藁にも縋る思いに付け込んで、お金儲けをすることは絶対にやめてもらいたい。

 

… … …(記事全文5,584文字)
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