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X(ツイッター)では言えない本音

鳥集徹(ジャーナリスト)

鳥集徹

#66 ケネディ氏を糾弾するメディアを糾弾する ~オールドメディアが印象操作できる時代は終わった~

2024年11月14日、米国のトランプ次期大統領がロバート・F・ケネディ・ジュニア氏を保健福祉省長官(HHS)に起用すると発表した。同省は米国の医薬行政の要であり、コロナ対策を主導してきたFDA(米国食品医薬品局)、CDC(米国疾病予防管理センター)、NIH(米国国立衛生研究所)などを管轄している。これによってケネディ氏は米国予算の4分の1を掌握する大きな権限を持つことになる。

 

ケネディ氏は司法長官を務めたロバート・F・ケネディ氏の息子で、ジョン・F・ケネディ元大統領の甥にあたる。彼のサイト(KENNEDY MAHA)で経歴を見ると、1985年から弁護士として環境問題に取り組み、ゼネラル・エレクトリック社の有害物質流出事件や、エクソンモービル社の石油流出事件などで活躍。さらに農薬ラウンドアップによって貧しい農民や移民が非ホジキンリンパ腫を発症したとしてモンサント社を相手に起こした訴訟で、110憶ドルの賠償金を得るなどの成果を上げてきた。

 

23年に大統領選への立候補を表明したが、24年8月に選挙戦から撤退してトランプ大統領支持に回ったことは読者もよくご存じのはずだ。そのケネディ氏の起用を米国だけでなく日本国内の大手メディアも歓迎していないようだ。複数のテレビや新聞で、同氏は「ワクチンは自閉症の原因だ」「新型コロナワクチンは最も致死性が高い」といった主張を繰り返す「反ワクチン」の「陰謀論者」と報じられた。それだけでなく、子グマの死体をニューヨークの公園に放置するいたずらを告白して物議をかもしたというエピソードまで書き立てられた。つまりは、「奇行が目立つ頭のおかしな人」という印象操作をしたいのだろう。

 

確かにケネディ氏の主張は、極端に思えるところがある。同氏は自閉症以外にも、アレルギー、自己免疫疾患、慢性疾患、ADHD(注意欠陥多動性障害)、言語障害、睡眠障害、顔面チック等々が、ワクチンが潜在的な犯人だとしている。また、ワクチンだけでなくコーンシロップ、加工食品、携帯電話、電磁波、超音波、農薬等々も、こうした疾患の犯人リストに入ると著書に書いている(ロバート・F・ケネディ・ジュニア著、石黒千秋訳『人類を裏切った男』上巻序文より)。

 

ケネディ氏は最近も、超加工食品(Ultra-Processed food)の摂取や、ファストフードなどでの種子油の使用が肥満の蔓延を引き起こしているとX(旧ツイッター)に投稿した(24年10月22日)。また、虫歯予防の目的で飲用水に添加されるフッ素が「関節炎、骨折、骨腫瘍、知能低下、神経発達遅延、甲状腺疾患に関連している」として、トランプ政権では「公共の水からフッ素を除去するよう勧告する」ともXで表明している(24年11月3日)。

 

このようなケネディ氏の主張に首をかしげる人や、非科学的だと反発する人も多いだろう。だが、彼の主張を頭から誤りであると断言できるだろうか。人類がこれほど多くのワクチンを乳幼児期から打たされ、加工食品、食品添加物、種子油、残留農薬、フッ素などを日常的に摂取し、携帯電話などからの電磁波を四六時中浴びるようになったのは、この数十年のことだ。それらが健康に害を及ぼすのではないかという心配が人々の間から出てくるのも不思議なことではない。

 

医学界の主流の公式見解では、ワクチンと自閉症とは無関係とされている。また、食品添加物、種子油、残留農薬、フッ素、電磁波等々も、現在使われている量であれば人体には悪影響を及ぼさないというのが規制当局の見解だ。英国国営放送BBCも、ケネディ氏のコロナワクチン、超加工食品、フッ素の主張についてファクトチェックを行い、研究者たちに「非科学的な主張」と印象付ける記事を配信している(BBC Verify team「Fact-checking RFK Jr's views on health policy」2024年11月16日)。

 

だが、医学界や規制当局は、製薬や食品などの産業界から巨額の研究資金や運営資金等の提供を受けており、安全とする研究結果があったとしても俄かに信用することはできない。ケネディ氏も、「規制当局は、規制対象であるはずの人間たちに取り込まれている」と指摘している(前掲書)。それに、ケネディ氏の発言をきちんと聞いてみると、極めて真っ当なことを言っているのだ。たとえば、元FOXニュースの看板キャスターだったタッカー・カールソン氏がトランプ大統領再選の翌日11月6日にYouTubeで配信したライブ・インタビューで、ケネディ氏は次のように語っている(一部抜粋要約)。

 

「私は人々からワクチンを奪いたいわけではありません。年間7600万人の健康な子どもたちがワクチン接種を義務付けられています。したがってリスクがないように、しっかりしたものでなくてはなりません。しかし、72種類のワクチンのうち、承認前の安全性試験で二重盲検プラセボ対照試験を経たものは一つもないのです。私がホワイトハウスで仕事を任されたら、これらの研究が確実に行われるようにして、承認する委員会には利益相反のない人が選ばれるようにします」(Tucker Carlson Election Night LIVE From Mar-a-Lago With Special Guests.)

 

この意見に全面的に賛同するのは、わたしだけではないはずだ。健康な人(とくに子ども)を対象にしたワクチンが極めて安全であるべきなのは当然のことだ。にもかかわらず、安全性と有効性を検証するのに科学的にもっとも信頼性の高い方法である二重盲検プラセボ対照のランダム化比較試験が一つも行われていないとしたら、本当に由々しき問題だと言える。また、中立性が求められる承認審査や安全性評価の委員会に、ワクチンメーカーと利害関係のあるメンバーが参加していること自体がおかしいのに、米国だけでなく日本でもそれが問題視されずまかり通っている。このケネディ氏の意見に「反ワクチン」「陰謀論」「非科学的」といったレッテルを貼ることは、誰にもできないはずだ。

 

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