Foomii(フーミー)

X(ツイッター)では言えない本音

鳥集徹(ジャーナリスト)

鳥集徹

#61今こそ【反コロナワクチン】運動のあり方を見直すとき ~「サクラバイト」と「レプリコン」二つの騒動を超えて~

私の推測だが「反レプリコン」を掲げる運動に積極的に参加している人には、もともと保守思想の強い人が多いと思われる。2024年9月28日の有明デモのスピーカーにも、主催者の林千勝氏(WHOから命を守る国民運動共同代表)をはじめ、ジャーナリストの山口敬之氏、日本文化チャンネル桜代表の水島総氏、英霊の名誉を守り顕彰する会会長の佐藤和夫氏など、著名な保守派の論客が名を連ねた。有明だけでなく日比谷で行われたデモの行列にも、日の丸を打ち振る人たちの姿が目立った。

 

このように保守色が強い運動体だが、私は反レプリコン運動の様子を見るにつけ、皮肉なことにかつての左翼運動、とくに「過激派」と言われた新左翼の運動とそっくりだと思ってしまうのだ。保守思想の人から「サヨクと一緒にするな」と怒られるかもしれない。だが、1985年に大学へ入学した私は、「朝日ジャーナル」を毎週欠かさず購読するような、遅れてきた「無党派左翼学生」だった。それにX(旧ツイッター)にも、私の考えに賛同する人が少なからずいた。だから、私の印象はそれほど外れてはいないはずだ。

 

かつて「デモ」と言えば左翼の代名詞で、いまの反レプリコン運動とはケタ違いの動員力や影響力があった。1960年の「安保闘争」では、「日米安全保障条約改定反対」を叫ぶ群衆約30万人が国会議事堂を取り囲み、学生約7000人が警察のバリケードを突破して議事堂内に突入した。この国会突入デモで東大生の樺美智子さんが死亡。安保条約は自然延長されたが、初の米大統領訪日が延期され、岸信介内閣が退陣に追い込まれるほどのインパクトがあった。

 

1960年代後半には、医学部のインターン制度廃止と研修医の処遇改善を求めた運動に端を発する「東大闘争」が勃発。そこから火の付いた「全共闘運動」が全国に飛び火し、多くの大学の自治会が大学当局と対立し、闘争・紛争状態となった。1969年の国際反戦デーには全国約600か所でおよそ86万人が統一行動を起こし、中央集会には約8万人が参加。東京ではデモ隊の一部が暴徒化して、交番が放火されるなどの事件が起こった。

 

今の穏健な若者たちの姿からは考えられないことだが、これらの運動の中心は大学生たちだった。当時、若者たちが社会を変えようと必死で声を上げる姿に、共感する知識人や庶民も多かった。しかし、これだけの人々を動員しながら、なぜ左翼運動は下火になっていったのか。それは思想が先鋭化して、暴力革命を肯定するなど、運動が「過激」になっていったからだ。そして、テロ行為が正当化され、新左翼の活動家たちが「テルアビブ空港乱射事件」や「三菱重工ビル爆破事件」など、大量の死者・負傷者を出す残虐な事件を次々に起こした。

 

また、闘争に対する考えの違いなどから細かいセクト(分派)に分かれていき、お互いの対立が激化していった。その対立がやがて「内ゲバ(内部ゲバルト=ドイツ語で暴力)」を呼び、多数の死亡者を出した。そしてセクト内でも異論を唱えるものや意思の弱いものを「総括」と称して集団で吊し上げ、「山岳ベース事件」や「あさま山荘事件」など、凄惨なリンチ大量殺人事件が起こった。そのため、「左翼は怖い」という印象だけが植えつけられ、大衆から忌避されるようになったのだ。

 

こんなことを書くと、反レプリコン運動に参加している人たちから、「ここまで過激なことはしていない」と反論されるだろう。もちろん、物理的な暴力や事件を起こしているわけではない。しかし、内ゲバやリンチの舞台がX(旧ツイッター)に移っただけで、やっていることの本質が変わらないのではないか。実際、「DNA問題」が勃発してからというもの、そのリスクに否定的な新田剛氏(免疫学者)、宮沢孝幸氏(ウイルス学者)、そして私に対する中傷が、いまだにしつこく続いている。

 

レプリコンワクチンによる「個体間伝播」についてもそうだ。それに対して「極めて考えにくい」と見解を示した新田氏、宮沢氏、掛谷氏、そして「反レプリコンの過激な言動は訴訟リスクがある」と指摘した私に対する中傷も酷い。最近も、「接種者の腫瘍からワクチン由来と見られるDNAが検出された」という話が出てきたが、「本当にワクチン由来と言っていいのか、研究者による批判的検証が必要だ」と、至極当然のことを指摘しただけなのに、わたしはX上でしつこく攻撃されている。

 

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