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X(ツイッター)では言えない本音

鳥集徹(ジャーナリスト)

鳥集徹

♯60【国民連合】は、なぜ訴えられたのか ~【レプリコン裁判】極めて厳しい闘いを強いられる~

2024年10月8日、レプリコンワクチン「コスタイベ」のメディアイベントで、Meiji Seikaファルマ(以下、明治)の小林大吉郎代表取締役社長が、「ⅿRNAワクチン中止を求める国民連合」(以下、国民連合)と「日本看護倫理学会」代表者らに対し、法的措置を取ると表明した。国民連合代表の後藤均氏、副代表の村上康文氏および代表賛同者の我那覇真子氏、そして同学会理事長の前田樹海氏が「被告」の対象として名指しされた。後藤氏と村上氏は、国民連合の発信内容すべてに責任ある立場として、損賠賠償を求められることになると思われる。

 

提訴の理由は「名誉棄損」だ。「告訴」であれば刑法230条の「名誉棄損罪」もあり得る。しかし、日経の記事に「提訴」とあったので、まずは民事での責任が問われることになるだろう(日本経済新聞「明治HD系、反ワクチン団体を提訴へ 名誉棄損で」2024年10月8日)。訴状の内容や損害賠償請求額など詳しいことはまだ不明だが、これから少しずつ詳細が明らかになってくるはずだ。また、小林社長は「刑事民事両面で」と明言しているので、今後、「名誉棄損罪」や「偽計業務妨害」などでの告訴もあり得るかもしれない。

 

実は先日、「国民連合に参加している」という人から相談の電話があったので、裁判沙汰になったことをどう考えているのか聞いてみた。その人によると、レプリコンワクチンの「個体間伝播」の話を最初に聞いたとき、「こんなものを打たせたらまた大勢の人が死ぬ」「これ以上被害者が出ないように止めないと」と思ったという。そんなときに「国民連合」が結成されると聞き、心強く感じて参加することに決めたのだそうだ。そんなふうに、国民連合には純粋な気持ちで参加した人が多いのだろう。その気持ち自体は、わたしは尊重したいと思う。

 

ただ、話していて感じたのは、「一人でも多く接種を止めなければ」という気持ちが強すぎて、そのためには多少過激な言動でも許されると思っている節があることだ。そして、「ここまでは法的に許されるが、これを超えたら違法になる」という「線引き」ができていないようだった。ご本人も「法律には詳しくない」と話していたが、国民連合の支持者の中にも後藤氏、村上氏や運営メンバーらに対して、「こんな内容を発信したら訴えられるかもしれない」と止める力のある人がいなかったのではないだろうか。

 

なので、これを機会に、名誉棄損の成立要件について整理しておこうと思う。それを知れば、今回の「レプリコン裁判」で何が争われ、どのような結末になりそうかが、見えてくるはずだ。そして、コロナワクチンの薬害を訴える我々の運動がどうあるべきか、政府の「言論監視」の動きに対抗するには何が重要なのかも、深く理解できるだろう。なお、わたしは言論に携わる職業柄、他の人より裁判の実態や名誉棄損に詳しいという自負がある。実は昔、弁護士を多数取材して、本も書いたことがある(『広島の実力弁護士』南々社)。かといって法律の専門家ではない。わたしの理解に不足する点があれば、法律家のみなさん、ぜひ連絡フォーム等から教えていただきたい。

 

本題に入ろう。民事上の名誉棄損の成立要件は、以下のように解説されている(以下、ネット被害・IT法務解決サイト「名誉棄損の成立要件 慰謝料の相場は? 名誉棄損にならないケースも」更新日2024年6月18日〈監修者アトム法律事務所代表弁護士岡野武士〉より引用抜粋)

 

公然性:不特定または多数の者によって認識される状態であること

事実摘示性:事実を摘示していること

名誉毀損性:人の社会的評価を低下させるような内容であること

 

「公然性」とは、「不特定または多数の者によって認識される状態であること」だ。国民連合のXへの投稿や動画などでの発信も、当然、これに当てはまるだろう。次に「事実適示性」とは、「具体的な事実を適示していること」を言う。たとえば今回、明治が「コスタイベの誤った情報」として問題視しているのは、国民連合から発信されてきた以下のような発信だ(当ウェブマガジンの前々号「#58【Meiji Seikaファルマ】小林社長の会見を「読む」~法的措置とレプリコンワクチンの行方~」を参照)。

 

1.レプリコンのmRNAが増殖し続ける(いわゆる「無限増殖」の問題)

2.接種した人の呼気や汗から伝播し悪影響を与える(いわゆる「個体間伝播」の問題)

3.人間の遺伝情報や遺伝機構に影響を及ぼす(いわゆる「DNA」問題)

4.IgG4抗体を増加させ、かえって免疫力を弱める

5.海外で未認可のワクチンを、日本だけが承認したのは問題だ

 

なお、ここで押さえておくべきなのは、名誉棄損の要件として「書かれている内容が嘘でも、本当のことでも関係ありません」とされていることだ。つまり、本当のことであったとしても、その人や組織の評価を落とすような悪口であれば、名誉棄損は成立する可能性があるのだ。X(旧ツイッター)に投稿する人は、この点も頭に入れておいたほうがいい。

 

そして三つ目の「名誉棄損性」は、次のように解説されている。「名誉棄損性とは、人の社会的評価を低下させるような内容であることです。具体的には、犯罪行為を行ったと誹謗中傷したり、社会的に評価を低下させるような噂を流したりすることが該当します」。今回のレプリコン裁判の場合、明治は後藤氏や村上氏が代表・副代表を務める団体が、上記5点のような「誤った情報」を流したことで、「社会的評価が低下した」と裁判所に申し立てることになるわけだ。

 

… … …(記事全文5,475文字)
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