Foomii(フーミー)

X(ツイッター)では言えない本音

鳥集徹(ジャーナリスト)

鳥集徹

「ワクチン被害者」の「自己責任論」は間違っている ~心の傷に塩を塗り込むことはやめるべきだ~

X(旧ツイッター)のアカウント「お父さんに会いたい」さんの投稿で、コロナワクチン被害でお父さんを亡くされた「あねさん」がnoteに書いた「経緯と、思ってることと、これからの話」(2024年6月28日)という文章を知った。

 

それによると、大半の未接種者は被害者遺族に寄り添う言葉をかけてくれるのだが、ワクチン反対派を自称する「一部」の「未接種者」の中に、こんなような心ない言葉を投げる人たちがいるという。

 

「このワクチンの危険性は少し調べればわかったはずだ」

「私たちは危険性を知らせようと活動してきた」

「接種して被害に遭ったのは自己責任だ」

「騙された方も悪い。だから薬害が繰り返される」

「救済金を受けとるなんて税金の無駄遣いだ」

 

被害を受けた人たちは、ただでさえ傷ついている。誰かに言われなくても、接種したことや接種させたこと、止めなかったことを一番後悔しているのは本人だ。予防接種健康被害救済制度の救済金も、国が定めた予防接種を受けて健康被害に遭ったと認定された人は、誰でも受給する権利がある。苦しみや悲しみの渦中にある人の傷に、さらに塩を塗り込むような行為は、人としてするべきではない。

 

10年前にお母さんを亡くされたあねさんとお父さんは、当時二人暮らしで、親子仲良く平穏な日々を送っていた。そのお父さんが、集団接種会場で2回目のコロナワクチン接種(ファイザー社製)を受けたのは、2021年7月27日のことだった。それから10日後、お父さんは手足のしびれや痛み、脱力感に悩まされるようになった。

 

医師から「急性のギラン・バレー症候群」(ワクチン接種後などに起こることのある末梢神経障害)の疑いと診断されたお父さんは、リハビリと治療の目的で入院。しかし、病状が悪化して、最後には誤嚥性肺炎を起こし、10月2日に亡くなった。接種から、たった2か月のことだった。

 

悲しみに暮れる間もなく、予防接種健康被害救済制度があることを知ったあねさんは、救済申請をするために役所を訪ねた。だが、窓口をたらいまわしに遭うとともに、書類を集めるのに役所、病院、保健センターを10数回も行き来するなど、仕事をしながら大変な苦労を強いられた。

 

そして、およそ100枚もの書類を集め、ようやく市に申請を受理してもらうことができた。最初の申請書類をもらってから、半年もの時間が必要だったのだ。そこまでの経緯はあねさんのnoteの「新型コロナワクチン接種後に父が亡くなった話①」(2024年3月3日)に書かれている。「コロナワクチン接種後に父が亡くなった話」というタイトルでマンガにもなっており、前者の文章の冒頭にリンクが貼ってあるので、それも合わせて読んでほしい。

 

市が申請を受理したのは22年3月だが、市から県、県から国に通達されたのは、それから1年後の23年3月のことだった。さらに、国の審議結果が出たのが24年2月26日、認定の連絡を受けたのが24年5月9日、定例市議会で補正予算案が可決されたのが24年6月7日、指定された口座に振り込みがあったのが24年6月21日。なんと申請から救済されるまで、2年3ヵ月もかかった。

 

あねさんは国賠訴訟についても複数の弁護士に相談したが、「行政訴訟は出来ない」「世論の考え方が変わらないと難しい」「裁判自体反対」と言われてしまったという。国が猛烈に推進したワクチン接種であったにもかかわらず、いざ健康被害に遭ってしまったら救済や補償を受けるのに、どんなにハードルが高いかがわかる。過去の薬害や医療事故の裁判もそうだったが、原告となった被害者は大変な苦労と覚悟を強いられる。

 

それを知っていたので、私は被害者の方々に「裁判するべきだ」とは言えなかった。泣き寝入りをせずに、裁判やワクチン反対運動をするべきだという人もいる。しかし、ただでさえ大切な家族を亡くして辛い思いをしているうえに、家庭生活や仕事、近所づきあいなどもある。裁判や運動をしている人たちは応援しつつ、できない人もいることを理解して、それぞれの考えを尊重すべきだろう。

 

そして、「自己責任論」についてだ。わたしは、医療においては患者(ワクチンにおいては接種される人)の自己責任論は、よほどのことがない限り成り立たないと考えている。なぜなら医療介入の是非を評価するには、専門的な知識と複雑な判断が必要であり、十分かつ分かりやすい説明がないと、一般の人が適切な選択をすることは難しいからだ。情報量に圧倒な差があるために、患者は医師によって容易に「誘導」されてしまう。それが「医師-患者」関係の本質なのだ。


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