Foomii(フーミー)

X(ツイッター)では言えない本音

鳥集徹(ジャーナリスト)

鳥集徹

死者急増の原因を「科学的に」究明するよう求めるべきだ ~「そこまで言って委員会NP」での発言をめぐって~

2024年5月19日放送の「そこまで言って委員会NP」(読売テレビ系列)に、京都大学を退職したばかりのウイルス学者・宮沢孝幸さんが出演して、X(旧ツイッター)で話題になった。この中で宮沢さんが「3回目以降はそんなに要らなかったんじゃないですか」と発言したことに対して、反発が広がっている。

 

「1、2回目接種で被害を受けて苦しんでいる人もいるのに、倫理観に欠けている」

「1、2回目までは良かった、必要だったと肯定しているということか」

 

Xのポストを見ると、反発の理由は、この2つにまとめることができそうだ。なかには、「3回目までは必要と言い出した」「3回目までは良かったと発言している」と言ったかのように誤解して批判する人もいたが、これは論外だ。実際に、宮沢さんたちがどのような話をしていたのか。重要な部分を抜き出して、文字に起こしてみた。

 

以下、橋本=橋下徹(弁護士、元大阪市長)、宮沢=宮沢孝幸(ウイルス学者、元京都大学医生物学研究所准教授)、黒木=黒木千晶(読売テレビアナウンサー)、山口=山口真由(元財務官僚)、泉=泉房穂(弁護士・元明石市長)、辛坊=辛坊治郎(元読売テレビニュースキャスター)、以上・敬称略

 

橋下 宮沢さん、感染予防効果はないというのは、その当時いろいろ言われてたと思うんですけど、ワクチン打っても感染すると。重症化予防効果は?

宮沢 重症化予防効果は、それはあるだろうということは言ってました。コロナで感染してどうやって回復するかというと、細胞性免疫なんですよ。細胞性免疫が誘導されるから、それは重症化予防効果はあるだろう。

黒木 ご高齢の方にとっては、リスクとベネフィットどちらが高かったと思いますか。

宮沢 当初はベネフィットのほうが高かったんじゃないかと思ってるんです。

(中略)

橋下 重症化予防効果が出ているというところはほぼ確定しているじゃないですか。

宮沢 最初はね。

橋下 菅政権はね、有事の時に国民にきちんと説明するのがちょっと足りなかったのは、あの時の政権は重症化予防を重視したんですよ。というのは、医療の逼迫を避けるというのが国家戦略で、それはコロナの患者さんだけじゃなくて、あのとき医療逼迫して、他の患者もまったく医療を受けられない状態になったんで。だからあのとき、超過死亡率が確かすごく上がりましたよね。

宮沢 超過死亡見てみましょうか。あの辛坊さんが言うんですけど、実はデルタまでのほうが人死んでなかったんですよ。オミクロンになって重症者数は激減しました。ところが死者数はめちゃくちゃ増えてんですよ。これがワクチンのせいなのかコロナのせいないのかというのは議論があって、今のところワクチンの接種にも相関が見えるんだけど、きれいに相関が見えるのはコロナのほうなんですよ。そうするとコロナが流行るときに、コロナ以外で死んでるというよくわからない。

山口 なんで医療崩壊起きてないんでしょう。起きてたの?

宮沢 起きてないです。

山口 じゃぁ、なんで。

黒木 検証をどうやってするのか非常に難しいですけど。

宮沢 難しいです。

黒木 ワクチンを打った世界と、ワクチンを打ってない世界が同時に存在していれば検証はできますけれども。

宮沢 あの、最初は効いてるんです。で、重症化予防効果はあるんだけれど、今問題になってるのは、とにかく人が死んでるんです。

黒木 ちょっと宮沢さんに聞きたいんですけど、いままでいろんなコロナ禍があったと思うんですけど、一番伝えたいことは何か。

宮沢 とにかくわからないことが多くて、ウイルス屋としてはですね、いろいろなリスクを考えるんです。もちろんウイルスのリスクも考えるし、ワクチンのリスクも考えて、どれが正解かなんてね、最初わかんなんですよ。僕はたくさん打っちゃったら変異株が出たときに、どうなっちゃうのかということを心配してました。ですので、いま振り返ってみれば、3回目以降は、そんなに要らなかったんじゃないですか。

橋下 3回目以降ですね。だからやっぱり有事も最初の段階でわからないときには、社会を守るために、誰もわかんないんだから、犠牲をこうむるくらいの覚悟。

泉  それは反対、それは反対。

橋下 いや、僕はもうしょうがないと思う。

泉  社会防衛で強制するのは反対。

橋下 それは未来世代を守るために(開場騒然)

辛坊 そこはね、あのとき何があったのかしっかり検証してください。私は基本的に宮沢さん応援してます(以下略)。

 

このやりとりを読んでわかることは、宮沢さんは当初は(2回目までは)、コロナワクチンには重症化予防効果があり、高齢者にはベネフィットのほうが高かったのではないかと思っているということだ。ただし、3回目以降はそんなに要らなかったのではないかと発言している。

 

そして、重要な疑問として、次のことをあげている。オミクロンになって重症者が激減したのに、デルタ以前より死者が増えている。そして、死者の増加はワクチン接種よりもコロナ(陽性者数)のほうがきれいな相関が見られるが、コロナが流行るときにコロナ以外で死者が増えるという不可思議な現象が起こっているという指摘だ。

 

こうした発言や指摘に、感情的に反発するのは意味のないことだ。これをもって、宮沢さんがコロナワクチンを肯定しているかのように言って攻撃し、足を引っ張ろうとするのは、かえって敵(ワクチン推進派)を利することになる。宮沢さんは明確に、「mRNAワクチンの即時中止を求めています。それはワクチンによる被害が出過ぎているからです」とXに投稿している(2024年5月18日の投稿)。それはみんなが素直に認めるべきだ。

 

ただ、私は番組での一連のやり取りを見て、ご本人には申し訳ないが宮沢さんの説明は言葉が足りなかったと思った。そして、2回目までは高齢者にベネフィットがあったのではないかと発言したことも、率直に言って拙速ではなかったかと思う。できれば「ベネフィットがあったかどうか、わからない」と発言してほしかった。その理由を、以下に述べる。

 

… … …(記事全文5,128文字)
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