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鳥集徹(ジャーナリスト)

鳥集徹

【コロナワクチン】定期接種化はメーカー「救済策」だ ~繰り返す「インフルエンザワクチン」の愚かな歴史~

11月22日、厚生労働省の専門部会(厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会/部会長:脇田隆字・国立感染症研究所長」が、来年度以降のコロナワクチンを、年1回、秋から冬のシーズンに実施する「定期接種」にすることを了承した。

 

定期接種とは、予防接種法に基づいて市町村が実施主体となり行われるもので、接種の努力義務が課せられ、集団予防に重点が置かれる【A類疾病】と、個人の発症や重症化予防に重点が置かれる【B類疾病】がある。A類の費用は全額市町村が負担するが、B類は一部自己負担となる。

 

コロナワクチンは、季節性インフルエンザワクチンと同じ【B類疾病】に位置付けられることになった。定期接種の対象となるのは新型コロナのリスクが高い65歳以上の高齢者と重い基礎疾患を持つ人で、費用は地方交付税で3割補助のうえ、一部自己負担となる見込みだ。65歳未満で重い基礎疾患のある人は、「打ちたければ全額自己負担」ということになりそうだ。

 

さて、この定期接種「B類」化が何を意味するのか。それは政府・厚労省が事実上、コロナワクチンには集団免疫を達成して、コロナの流行を抑える力はないと認めたということだ。前出の部会の資料1(「令和6年度以降の新型コロナワクチンの接種について」2023(令和5)年11月22日)にも、次のように明記されている。

 

「令和6年度以降の新型コロナワクチンの接種については、個人の重症化予防により重症者を減らすことを目的とし、新型コロナウイルス感染症を予防接種法のB類疾病に位置づけた上で、法に基づく定期接種として実施することとしてはどうか。」

 

この資料には「個人の重症化予防により重症化を減らすことを目的とし」とは書いてあるが、「集団予防を目的とする」とは書かれていない。それは当然だろう。コロナワクチンで集団免疫はできず、コロナの流行を抑えることはできなかった。それどころ、接種が始まってからのほうが、陽性者が圧倒的に増えたのだから、A類にできるはずがないのだ。

 

しかし、コロナワクチンを接種させるために、政府が国民に何を言って来たのか、あらためて確認するべきだ。菅義偉前首相は2021年6月17日の記者会見で、「職域接種も本格的に始まり、若い人を含む希望者への接種が続く、集団免疫に近づいていくと思っている」と話していた。河野太郎元ワクチン担当相も同年6月23日の日本テレビの番組で、「10~11月に集団免疫を獲得できるよう、しっかり取り組む」と発言していた。

 

菅氏と河野氏の発言から分かる通り、政府はコロナワクチンで集団免疫が達成され、流行を抑えることができるかのような幻想を国民に振りまいてきたのだ。そして、その発言の裏付けとなったのが、感染対策を担った専門家たちの助言だったはずだ。しかし、約束を破った者たちが公に謝罪する姿を、まだ見たことがない。このことを、国民はもっと怒るべきではないか。

 

そして、このコロナワクチンの定期接種「B類」化の流れを見て、私の頭に思い浮かぶのが「インフルエンザワクチン」のことなのだ。このワクチンは60年代から小中学校などで集団接種が行われていた。私も子どもの頃、学校の体育館に並んで、注射を打たされた。当時は、注射針は使い捨てではなく、消毒して使い回されていた記憶がある。それが薬害B型肝炎蔓延の原因ともなった──。


ところが、インフルエンザワクチンの有効性に疑問符がつき、94年に集団接種が中止となった。その判断に大きな影響を与えたのが、前橋市医師会の研究班が「インフルエンザワクチンには、小中学校のインフルエンザ流行を抑える力はない」という調査結果を示した「前橋レポート」だった。この前橋レポートは、ワクチン推進派からの評判がすこぶる悪い。けれども、私は前橋レポートに言及するまでもなく、集団接種中止の判断は妥当だったと評価している。


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