… … …(記事全文4,845文字)2023年11月16日、共同通信が驚愕の記事を配信した。京都大学教授・西浦博氏(理論疫学)らのチームが、「新型コロナウイルスワクチンの接種によって、国内の2021年2~11月の感染者と死者をいずれも90%以上減らせた」との推計をまとめたというのだ。
続けて、「この期間の実際の感染者は約470万人、死者は1万人だったのが、ワクチンがなければそれぞれ約6330万人と約36万人に達した恐れがある」「接種のペースが実際よりも14日間早ければ感染者と死者を半分程度に抑えられ、14日間遅かったら感染者は2倍以上、死者数は約1.5倍になっていた」と、驚くような数字を記事は伝えている(共同通信「コロナワクチンで死者9割以上減 京都大チームが推計」2023年11月16日)。
西浦氏と言えば、パンデミックの幕が開けた20年4月、「人と人との接触を8割減らさないと、日本で約42万人が新型コロナで死亡する」という予測を発表し、「不安を煽り過ぎだ」と各方面から非難を浴びたことが思い出される。そんな懲りない「8割おじさん」の、こんな荒唐無稽な推計を誰が信じるだろうか。この記事を掲載したYahoo!のコメント欄にも、次のような懐疑的な声ばかりが並んでいた。
「どのような試算で検証したのか? 結果だけ公表しても、その検証過程を公表しなければ何とでも言えますね」
「コロナワクチンで死者9割以上減は、さすがに盛りすぎじゃないですか」
「感染予防効果はないなんて、今や誰でも知ってるのに。 どうしてワクチンのおかげで感染者が6000万人近くも減少したなんて言えるのかね?」
「この記事を信用できる人は、立派なワクチン信者です」
もしコロナワクチンに死者を90%も減らせる効果があったのなら、日本国内の死者が減っておかしくないはずだ。ところが、2021年の死者は143万9856人(人口動態統計確定値、以下同)で、20年(137万2755人)に比べて、戦後最大の6万7101人も増加したのだ。これがどれくらいのインパクトがあったかというと、東日本大震災の影響があった2011年以来、10年ぶりに平均寿命を短縮させたほどだ。
そして、2022年はさらに死者が激増して156万9050人となった。戦後最大だった前年を軽く上回り、12万9194人も増加した。西浦氏の推計の通りであれば、ワクチンには35万人(ワクチンがない場合の死者約36万人-実際の死者1万人)も死亡を減らせる力があったはずなのに、どうしてブースター接種が何度も行われた22年になって、より死者が増えたのか。ブースター接種を重ねるほど、効果がどんどん落ちていったということなのか。それともオミクロン株になって、ウイルスがあり得ないほど凶悪になったということなのか。
X(ツイッター)では言えない本音
鳥集徹(ジャーナリスト)