… … …(記事全文3,964文字)◆「痛み分け」どころか、完全な敗訴
11月8日、吉本興業はお笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志が今年1月に文藝春秋社に対して起こした訴訟を❛取り下げる❜ことを発表しました。このニュースはテレビでもネットでも大きく取り上げられ、なんと「号外」まで出たそうです。日本って平和というか、何というか・・・こんなニュースでなぜ大騒ぎになるのか不可解としか言いようがありません。お笑いの文化が関西とは違う関東では関心のない人も多いと思うのですが一応、世間に衝撃を持って迎えられたニュースなので、今回はこの話を取り上げます。
吉本興業が出したプレスリリースの文章は、松本側が勝ったのか負けたのか分からないように曖昧さを演出しています。「強制性の有無を直接に示す物的証拠はないこと等を含めて確認いたしました」 という文章は主語が誰なのか。しかし「女性らが参加する会合に(松本は)出席しておりました」と認めています。松本は会合に参加していて、(その会合であった性行為の)強制性の有無も状況から推測して分かっているのです。ただ(性行為の)物的証拠はないという点をことさら強調しています。しかし、そもそも訴訟を松本側から起こしておいて取り下げる(和解ではない)というのは裁判を続けていても不利になるばかりだからです。『週刊文春』が報じてきたことは事実だった、と吉本も暗に認めているのです。
去年12月、文春が記事を出した直後にすぐ吉本興業が事実関係を松本に確認して記者会見を開いていれば、問題はおそらく収束したでしょう。「女遊びは芸の肥やし」という言葉があるように芸人は女好きで、遊び好きだということは日本では割と寛大に受け止められます。訴訟など起こさずに、記者会見を開いて誠実に対応すれば話はここまでこじれなかったでしょう。ところが松本人志はX(旧Twitter)に「事実無根なので・・・闘いまーす」と投稿して、裁判に訴えるという行為に出ました。危機管理として最悪だったといえるでしょう。