… … …(記事全文3,657文字)◆「スウェーデン・アカデミー」に抗議活動⁉
10月14日、韓国・ソウル市中区にある駐韓スウェーデン大使館前で「大韓民国愛国団体協議会」「国家非常対策国民委員会」「太極旗革命国民運動本部」など6つの保守系団体が抗議活動と記者会見を行いました。彼らは韓国の女流作家、韓江(ハン・ガン)氏にノーベル文学賞を授与したスウェーデン・アカデミーを糾弾するために集まりました。参加者は10人あまりで、60~70代の年配者でした。「大韓民国歴史歪曲作家ノーベル賞、大韓民国赤化加担スウェーデン・アカデミー糾弾」と書かれた横断幕を掲げて抗議をしたあと、「フィクションとノンフィクションの区別がつかない未来世代に誤った思想が刻み込まれることを考えれば胸が張り裂ける。偏向した歴史歪曲の肩を持つ、ノーベル賞の権威を失墜させたスウェーデン・アカデミーを糾弾する」という声明文を大使館に渡しました。
この記事を載せたのは極左メディアといっていい「ハンギョレ新聞」なので、この抗議活動を批判的に取り上げていますが、私はこの活動に賛同する韓国人は少なくないのではないかと思います。ノーベル賞といえば唯一、元大統領の金大中氏が受賞したノーベル平和賞しかない韓国では毎年、秋になると「今年は韓国から受賞者が出るかも知れない」と、期待が高まります。今年はついに念願がかなってノーベル文学賞を韓国人が受賞したのですから、国を挙げて歓喜の渦にならなければおかしいです。何かといえば日本と比較して勝った、負けたというのが好きな韓国人が意外と静かなのは、韓江氏の作品というのがひいき目に見ても、韓国を代表する文学とはとても言えないシロモノだからでしょう。
韓江氏は去年11月、『別れは告げない』(2021年発刊)という長編小説でフランスの
メディシス外国小説部門受賞作に選ばれています。そのことを紹介する新聞『中央日報』は「済州島四・三事件の悲劇を3人の女性の視線で描いた作品」と書いています。韓江氏はインタビューに答えて「済州島に部屋を借りて3、4カ月ほど過ごしたことがあったが、大家のおばあさんが路地のある塀の前で『この塀が済州島四・三事件の時に人々が撃たれて死んだところ』とおっしゃった。あの日の記憶がこの小説になった」と言っています。この言葉で彼女の歴史観がどのようなものなのか、おおよそ推測がつきます。