… … …(記事全文3,277文字)●腸閉塞をステント留置で凌ぐ 大腸癌の疑いが
前稿において、父が腸閉塞のため休日診療で処置を受け、そのまま入院したことについて触れた。処置とは、閉塞部に大腸ステント(前後を交通させる管)を留置したと記した。これは医師の便宜上の説明で、正確には、レントゲン透視下で大腸内視鏡を併用し、まず細いガイドワイヤーで閉塞部を突破し、ガイドワイヤーをガイドにステント留置器具を閉塞部に通過させた後に自己拡張型金属ステント(SEMS: self-expandable metallic stent)を留置するとのことだった。ちなみに、ステントは網目状の形状記憶合金(Ni-Ti)でできている。
その時、CT検査結果を見る限り、大腸癌の疑いが濃厚というのが医師の見立てだった。また、これですべてが解決という訳ではなく、検査結果や外科医等の意見も精査した上で最終的な判断をするとも伝えられた。私は、「もし大腸癌だとして、他に転移していない場合、どれくらい生き延びられますか」と質問した。医師は、「1年くらいは平気だとは思いますが、とにかく検査してみないことには分かりません」と返答した。
「また入院か。これで3年連続だよ」。一段落して私は弟に嘆いた。一昨年、父が転倒による大腿部骨折で3カ月入院、昨年は母がうつ病で同じく3カ月入院、そして今回である。弟は、「まあ、そう言うなよ。高齢者だからこういうこともあるさ」と慰めてくれた。
●楽になった父は「早く退院する」
その後、父は順調に回復し、普通に食事を摂るようになった。また、決まった時間に、歩行訓練などのリハビリも行っている。前回の入院時には、あれを持ってこい、これを持ってこいと、私にうるさく言い付けていたのが、今回はそれがない。不思議に思っていると、父と面会して来た弟が、「親父は、症状がなくなり、元気になったので、早く退院したいと言っていた」と理由を教えてくれた。冗談ではない。まだ、結果が出ていないのに吞気にも程がある。
●情報収集 人工肛門がネック
結果を待つ間、私の俄か勉強が始まった。横浜にいる妹が胃腸科クリニックへ通っているので、大腸癌の手術について尋ねるよう依頼した。それを聞いた従弟からすぐに連絡があった。彼の話によると、大腸癌は比較的転移が少ないこと、術後は人工肛門を付けなければならないとのことだった。人工肛門となった場合、不器用な父が自分自身で正しいケアができるとは到底思えない。妹は、高齢者でも手術はできるので受けた方が良いこと、人工肛門はやはり装着の必要があるとの情報を伝えてくれた。
父に手術を受けるだけの体力が残っているのか。受けられるのならそうして欲しい。ただ、人工肛門のケアだけは、今まで二人の要介護者の面倒を見るだけで、一杯一杯になっている私の手が回るのか不安になった。