… … …(記事全文2,753文字)本稿では、前稿に続き東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票条例案について述べる。4月8日、条例案に対する花角英世新潟県知事の意見が正式に発表された。
●条例案に対する花角知事の意見
1. 市民団体が約14万3千人の県民署名を集め、条例案の制定を請求したことについて意義を大変重く受け止める。
2. 再稼働の是非はエネルギー政策上の必要性、施設の安全性、避難計画の実効性、東京電力に対する信頼性など多岐にわたる観点から議論されている。
3. 「賛成」「反対」の二者択一では多様な意見を把握できない。
4. 公務員の政治的行為は法令で制限されている。公務員の県民投票運動は法令に抵触する可能性がある。
5. 開票事務の主体が整理されていない。開票事務を市町村に行わせることはできない。県選管が30市町村の開票事務を全て担うことは極めて困難である。
6. その他、条例案には記載誤り、文言の不足などがある。
●定例会見における花角知事の発言
4月9日の定例会見において、花角知事は条例案に対する付帯意見について以下のとおり述べた。(新潟日報から引用)
「(二者択一では)得られる情報は限られる。県民の意見を見極める段階での効果に限界がある」
「『賛成』『反対』の二者択一の選択肢では、県民の多様な意見を把握できない」
「間接民主制を補完するものとして住民投票という制度自体を否定するものではない」
「再稼働への県民の受け止めを見極める段階で県民投票には限界がある。かける労力や手間と得られる情報を比較考量した時に有効な方法か。条件付き賛成・反対、条件の内容は多様である。悩んでいる人は大勢いると思う。悩みや不安の種を拾っていくのが行政や政治の仕事だ」
県民投票への賛否を明言しないことについて:
「議会の議論なのでコメントすることはない」
「条例制定の権限は議会にある。知事意見は付けたので議会でしっかり議論してほしい」
多様な意見の把握について:
「議論が深まっていく中で、県民の気持ちを見極めていくためのプロセスを示したい」
以前から言及していた公聴会や首長との対話に加えて、県民の意識調査を挙げたが、具体的な時期や手法は明らかにしなかったという。
●著者所感
⇒「二者択一」問題
「シンプルで分かりやすい表現だ」。ある自民党県議は付帯意見を評価する。しかし、私には「体のいい逃げ口上」としか思えない。花角知事は今回の県民投票の意義を履き違えているのではないか。アンケートや意識調査ではない。東京電力(特に今回は国)から花角知事が求められているのは、再稼働の要請に「同意する」か「同意しない」かの二者択一なのである。