Foomii(フーミー)

蓮池透の正論/曲論

蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)

蓮池透

県民投票への長い道のり

●花角新潟県知事の優柔不断

このところ、柏崎刈羽原発再稼働の動きが静かである。あれだけ国から強い要請(というよりも指令)があったにもかかわらず。これには、島根県知事が「柏崎刈羽原発だけ特別扱いするな」と苦言を呈していた。まず、衆議院議員選挙期間中であることが挙げられる。しかし、最も考えられる要因は、花角英世新潟県知事のどちらともつかない曖昧な姿勢であろう。県民への丁寧な説明を国に委ねるような態度もとっている。自身の再稼働の是非の判断について「県民の信と問う」と宣言したが、未だに具体的な方法は明言していない。

 

柏崎市長や刈羽村長が再稼働に「いけいけどんどん」であるのとは対照的である。とりわけ柏崎市長は、花角知事の態度に業を煮やしてか「早く判断しろ。それができないのでは政治家とは言えない」という主旨の恫喝に近い発言までしている。それでは、柏崎市長は市民の信を問うたのか、と尋ねてみたくなる。再稼働に反対する私たちにとっては、花角知事の優柔不断さを歓迎している。だが、それだけを頼りにするわけにはいかない。「信を問う」手法を「県民投票」で決めるとして、その実現に向けて諸準備を行っている。

 

●県民投票までの流れ

ご存知の方が多いと思うが、一般の署名活動と異なり、条例制定を求めて署名を集める「直接請求署名」については手続きが厳正であり、様々な制約がある。ただし、その分効果は絶大である。以下に概略を示す。

 

県民投票条例案の作成と請求代表者の選任

  ↓

受任者募集

  ↓

県選挙管理委員会への請求代表証明書の申請・交付の告示

  ↓

署名収集 2カ月以内

    ↓

市区町村選挙管理委員会へ署名簿提出、審査(20日以内)

  ↓

署名簿の縦覧(7日間)

  ↓

本請求(署名簿の返送から10日以内)

  ↓

議会招集(本請求から20日以内)、議決から3日以内に結果を長に送付

  ↓

条例の交付(20日以内)

 

直接請求には有権者の50分の1の署名が必要である。新潟県の場合は、36641人(2024年3月12日現在)。請求代表者とは、議会へ請求をする直接の代表者であり、柏崎市からは3名、全県で66名が代表者になっている。「受任者」とは、請求代表者から「委任」を受けて有権者から署名を集める人である。一般署名と違い「受任者」しか署名を募ることができない(回覧は不可)ため、いかに多くの人に受任者になってもらうかが大きなカギとなる。ただ、「受任者」でも居住地以外の市区町村から署名を集めることができない。また、首長選挙等があるとその期間署名を募ることができず、開票日以降に署名期間が延長される。

 

●新潟県条例制定請求の要旨

「東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働の是非を問う新潟県民投票条例」(「新潟県条例」)制定請求の要旨は、現段階で次のとおりである。

 

2011年3月の福島第一原子力発電所の事故以来、私たちは隣県の人々の暮らしが一変する様を目の当たりにしてきました。

 

原発事故に関する「三つの検証」の生活分科会座長は原発事故による生活への深刻な影響、生活再建の困難さ、ふるさと喪失など避難を伴う様々な苦悩を詳しく検証したうえで、「新潟県の皆さまには、ひとたび原発事故が起きると、その周辺の住民の生活がどのような影響を受けるのかについて、ぜひ『自分ごと』としてお考えいただければと思う」と総括されました。福島第一原子力発電所の緊急事態宣言は、事故から13年を経た現在も継続中です。

 

私たちが住む新潟県には世界最大規模の東京電力柏崎刈羽原発があります。13年以上運転を停止しており、政府、東京電力はその再稼働に向けて手続きを進めています。

 

柏崎刈羽原発の再稼働は、私たち新潟県民の生命と暮らしに直結する問題です。

 

昨年、「三つの検証」報告が県民に公表されました。

 

この間、中越沖地震や元日の能登半島地震などを経験し、私たちは多くの教訓を得ました。再生可能エネルギーと核のゴミ処理の見通しについても認識を深めてきました。

 

一方、新潟県知事は、2018年実施の新潟県知事選挙において、柏崎刈羽原発・再稼働の是非は、「県民の信を問う」と、公約に掲げ当選されました。私たちも、その公約の実現を期待してきました。

 

しかし、知事はどのような手法で「県民の信を問う」のか明らかにせず、この間、県議会で問われても明らかにしませんでした。

 

そこで、知事の公約実現のためにも、私たち県民の一人ひとりが、柏崎刈羽原発と正面から向き合い、賛成・反対を超え、再稼働について熟議し、県政の主人公として責任を持って意思表示することは、新潟県の民意を確認する重要な機会になります。

 

そのためには柏崎刈羽原発の再稼働の是非を直接県民に問う投票を実施し、その結果を原発再稼働に関する知事の方針・施策にしっかりと反映していただきことが、ふるさと新潟の自治と発展につながると確信します。「新潟の未来は新潟県民が決める」。これが私たちの願いです。

 

以上の理由から、私たちは地方自治法の定めに基づき、柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う新潟県民投票条例の制定を請求いたします。

 

●新潟県民投票条例(案)

新潟県民投票条例(案)についても、すでに作成されている。第1条~第24条及び附則第1条及び第2条からなる。通常の選挙とほとんど変わらないが、特に重要な条項を示す。

 

【県民投票運動】

第19条 1 何人も、県民投票運動(東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に対し賛成又は反対の投票をし、又はしないよう勧誘する行為)その他の意見表明は、自由に行うことができる。ただし、買収、脅迫を行うこと等、県民の自由な意思を拘束し、又は不当に干渉するものであってはならない。

2 知事及び市町村長は、公務員が行う県民投票運動及び投票案件に係る意見の表明並びにこれらに必要な行為が不当に制限されることとならないよう、留意しなければならない。

 

【投票結果の尊重】

第22条 1 有効投票総数(賛成投票及び反対投票を合計した数)の過半数が、投票資格者の4分の1を超える数に達した場合には、知事及び県議会は投票の結果を尊重するとともに、国及び関係機関と真摯に協議し、東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関して、県民の意思が忠実に反映されるようつとめなければならない。

2 賛成投票の数が投票資格者の4分の1を超える数に達した場合であっても、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働の安全性が十分でないと知事が判断する場合には、前項の規定は適用しない。

 

●現状と今後の見通し

… … …(記事全文3,840文字)
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