… … …(記事全文4,394文字)前稿で、東京一極集中について、「小池百合子東京都知事は、選挙の争点にすることもなかったし、一極集中による地方との格差を問題にしているようには見えない。それどころか東京一極集中に拍車をかける施策を取っている。これについては、次稿で述べることとしたい」とした。本稿では具体的に続きを記す。
●加速する東京一極集中 最大のリスク
東京一極集中により様々な弊害が生じており、それが問題視されて久しい。最大のリスクは、自然災害による首都機能喪失であり、日本中が大混乱に陥り、この国が立ち行かなくなることは誰もが疑うことのないところである。
東日本大震災、東京電力福島第一原発事故の際に「東京一極集中は見直さなければならない」という声が上がった。また、コロナ禍における「リモートワーク」の普及により、東京から人口流出という報道も盛んに行われた。だが、現在も一極集中の勢いは衰えるどころか加速している。
自然災害が、首都圏直下型地震なのか南海トラフ地震なのか、はたまた富士山大爆発なのか、いずれにせよ、東京を直接襲う天災がやって来ることは間違いない。東京一極集中を解消し、代替の首都機能を災害時に担える都市を分散して備えておくことを急がなければならないのではないだろうか。
●東京の人口密度は飽和状態
単なる人口密度ではなく、山や森林の面積を除いた可住地人口密度を見た場合、最も低い北海道で約200人/平方キロメートル程度であるところ、東京は約1万人/平方キロメートルであるというから驚きである。ちなみに、全国平均値は1000人/平方キロメートルであるというから、いかに東京が過密であるかが分かる。
したがって、新たな住居は高層のタワーマンションに頼らざるを得なくなる。しかし、分譲は超高価である。一方、賃貸にしても家賃は破格だ。空き家問題が注目されているのに、これ以上新しい建物を造ってどうするのかと思う。私もかつて東京・江東区の豊洲に住んでいた。タワーマンションが雨後の筍のように林立したのだが、信じられないことに、幼稚園、小学校、病院等の生活インフラが足りなくなり、遅れて整備されたのだ。一過性の事態であるにもかかわらず。きちんとした都市計画ができていない証左である。
私は、この国の持ち家に偏り過ぎる住宅政策は異常ではないかと考えている。働き方も変わり終身雇用ではなくなった現在、家を購入するために30~40年のローンを組んで一生働き続ける価値があるのだろうか。良質で適正価格の賃貸公共住宅を提供する道もあるのではないか。多様性のある生活に対応するためにも。
●東京が日本の経済を支えているのか?
政治や行政の中枢、大企業の本社などが東京に集中している。これにより、東京がこの国の経済を支えているとするのは、誤りである。モノづくりの拠点があるのは地方だ。地方と東京との連携により、東京の隆盛が成り立っていることを忘れてはなるまい。本来であればウィンウィンの関係でなければならない東京と地方であるのに、東京の「一人勝ち」のような状況になっているのは異常である。東京にある大企業の本社は、災害時のバックアップ機能を有する組織を準備しておいた方がいい。
●それでも若者たちは東京を目指す
私が幼少のころの東京への憧れは相当なものだった。東京に住む従弟たちが、夏休みに田舎へ来ると、その後必ず私たち上京したものだ。初めて見た東京の印象は強烈だった。電車は分刻みでホームに入って来る。デパートには豊富に商品が並び欲しい物ばかりだった。冬場でも明るい太陽を拝むことができた。平凡で退屈かつ刺激のない田舎とは大違いだった。冬は陰鬱でその状態を倍加させた。
中高生になると、その思いは増大していった。「田舎者」と「東京(都会)人」との差は歴然としている。そう考えるようになった。もちろん、東京人の方が上で田舎者は下でありコンプレックスもあった。逆に、東京人は全てとは言わないが優越感を持っていた。東京にはありとあらゆるものが最先端を行き、ソフィスティケートされている。そして、それらを享受することができる。
蓮池透の正論/曲論
蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)